午前中、彼は
「車のオイル交換
行ってくるね」って
言って出かけていった。
静かになった
リビングにひとり。
『今日こそ、
やってみようかな』って
ずっと考えていた、
おうちカフェのサプライズ。
この前ふたりで選んだ、
お気に入りのお皿に、
焼きたての
チョコスコーンを並べた。
コーヒーも、
今日はちょっとだけいいやつ。
テーブルにはクロスを敷いて、
雰囲気を少しだけ整える。
そして、文化祭で使った
メイドカフェの
エプロンを見つけて、
「ちょっと恥ずかしいかな…
でもいいや」って、
そのまま着てみた。
準備を進めるうちに、
なんだか私まで
わくわくしてきて、
彼の帰ってくる時間が
楽しみで仕方なかった。
午後2時すぎに 玄関の鍵が
カチャッと鳴って、
彼が帰ってきた。
『ただいま〜……って、え?』
予想以上に驚いた声。
私は少し照れながら
『カフェっぽくしてみたんだ〜』
って笑った。
『ちょっと出かけてる間に、
部屋もせいかも
こんなに可愛くしてるなんて…
なんだか照れるな』
彼はそう言いながら、
ゆっくりソファに
座って テーブルの上を
見渡しながら
『これ、俺のために?』 って
聞いてきた。
『うん。いつも私の好きに
付き合ってくれてるから、
今日は私がなにか
してみたくて』
そう伝えると、
彼はやさしい目で
私を見て言った。
『せいか、ほんと好き』って。
-カフェタイムが終わって、
ふたりで並んで座って
私は彼の太ももに横になった。
彼は私の髪の毛を
クルクル指で回しながら
やさしい 声で
『ねえ、せいか。またやってね。
今日みたいなの、
すごく嬉しかったから。
たまにでいいから、
またお願いね』って。
私は彼を見上げながら
にこっと笑って
『うん、またやってあげる。
次はもうちょっと
凝ってみようかな』って
言ったら
『ほんと? 約束だからね』
彼はうれしそうに目を細めて、
そのまま私の唇に
ゆっくりキスをしてくれて、
『せいかが彼女で、
ほんとによかった
めちゃくちゃ好き』って
ささやいた。

