朝、いつもより1時間早く目が覚める。
6時。
隣に夫がいない。わかっているけどいない。隣の部屋にも仕事部屋にもいない。淋しい。
出張に行っている夫。
帰宅予定は早くて夜の21時頃だ。淋しい。
私は別に淋しんぼではないし
どちらかというと、いやかなり、ひとりが得意なひとり好きだ。
多くの時間、むしろ好んでひとりでいたりもするのだが、
夫だけは違う。
個人としての夫に対しての特有の感情、といえれば本当はいいんだけど、そうではなくて、
夫とか恋人とかそういう類の存在に対しては、いつもそういう感情を抱く。
「彼氏人間」と昔は自分を呼んでいた。いまは「夫人間」とでもいおうか。
彼氏、や夫、がいないとなにもできない!というわけではもちろんなく、
ひとりでラーメン屋に入ってとんこつ醤油ラーメン味卵入り、をすすっていたりもするのだが、
彼氏、とか夫、が、いま、ここに!いたらいいなあ、と四六時中思っている、ということだ。
しかし実際に四六時中一緒にいられるわけもない。それでも四六時中、思っている。枯渇することのないこの思い!やれやれ。
夫は逆に「彼女」や「妻」の不在にうんともすんとも思わないタイプだ。
自分ひとりでやりたいことをやりたいときにやるし、そのペースは相手に依存しない。
さすがに2週間ほど、恋人時代の夫を放ったらかして海外をうろうろしていたときは「もう帰ってきて欲しい」と思ったようだが、
きっとそのときのそういう心の動きは、ふたたび放ったらかしにされるまで忘れているに違いない。
さてそんなわけで夫はいない。
つまらないので二度寝をするが、やはり目が覚めてしまった。
仕方なく起きる。7時。まだ7時だ!夫が帰ってくるまで推定14時間。
いくら淋しんぼであってもやることはあるのでさっさと起きて、朝ヨガ30分。
移動疲れも取れたので今日はみっちりとからだを動かす。
ヨガをすると体中がぽかぽかとあたたかい。
朝食後、しばらく仕事。
日比谷花壇から電話。
インターネット注文の「敬老の日のプレゼント、写真メッセージカード付き」に載せる写真が、登録期限を過ぎてもまだ登録されていないのですが・・・という内容。
登録していないもなにも、そちらから来ることになっている、写真を登録するための手はずの案内を待っているのですが・・・と伝えると、
どうも手違いで、案内メールが未送信、それも私だけではなく、複数人そういう人がいるらしく、一人ひとりに電話をして確認をしている様子。
念のためゴミ箱やスパムフォルダなども見てみたが、やはり案内メールは存在しない。
メールを送ってもらえば済むことなので、すぐにメールを送ってもらい、登録を済ませる。
おそらく、登録期限内に登録を済ませた人が少なく、原因を探っていたに違いない。
そうして今頃、きっとWeb部署の方々や実際にメッセージカードを作る会社の人たちはてんてこ舞いされていることだろう。頑張ってください。
午後に不妊治療に通っている代田橋の病院の予約があるので、
少し早めに到着し、「チャビィ」というカフェへ行ってみる。
喫茶店ではなく、カフェ、という感じのお店。
広い店内はギャラリーも兼ねているらしく、さまざまな画家さんの絵やTシャツなどがかかっている。
飲み物を頼もうと思っていたのだが、気が変わって「野菜スープ」をいただいてみた。
ごろりとした野菜がたっぷりでやさしい味。
お店の方々もみな感じが良い。
病院の往復だけだとつまらないので、これからはこのカフェを病院とセットで考えることにしようと思う。
予約時間が近づいたので病院へ。
めちゃくちゃたくさんひとがいて焦ったが、思ったよりかなり早く診察室に案内される。
今日は改めて、今後の治療方針について相談をする、というのが目的。
初診の内診のみで「人工授精しか道はない」というようなことを言われてしまい、
事実そうなのかも知れないのだけれどもかなり慌ててしまい、
また気持ち的に、病院に対する拒否感、まではいかないものの、どうしよう・・・という迷いが出てしまっていたため、
担当医師を変更し(友だちおすすめの医師。この病院のいいところのひとつは、何人もいる医師を自分でいつでも選べる、ということだ)、改めてもう一度、医師の所見を確認し、自分の考えを話したうえで、ではどうする?ということを決めたい。通告を受けたいのではなく、医師と相談がしたい。そう思ったのである。
さて新しく担当に選んだK医師。
どちらかというと繊細なイメージを持っていたのだが、全然違って、がっちりとしており、また先週まで夏休みでした、海(山?)に行ってきましたというのがバレバレの日焼けっぷりで、むしろ頼もしい印象すら受ける。
まずは前回受けた検査の結果から教えてもらう。
各種感染症の検査のほか、卵巣年齢を判断する検査も受けていたのである。
結果、感染症はなく、「老化の可能性がある」と前回の診察でいわれて相当落ち込んでいたものの卵巣年齢は実年齢よりやや若い、ということがわかった。ひとまずほうっとする。
するとKセンセイ、カルテを見ながら、
「Kさん、人工授精、しなかったですね、どうしました?」とおっしゃる。
そこで、しようと思っていたのだけれども、やはり何の検査もない状態でいきなり人工授精をすすめられるのは納得がいかないこと、そのため検査をきちんとしたうえで、対策を練りたいこと、などを話す。
なるほどなるほど。
と何度も力強くうなずきながら聞いていたセンセイ。
「Kさんはやはり、子宮頸癌をしていますからね、子宮頸癌をしていると、やはり人工授精ということになってしまうんです」という。
図解しながら詳しく説明をしてくださったのだが、要約すると、子宮頸癌をして子宮頸部を切除すると、おりものが出にくくなる。そのため精子の進行が妨げられ、実年齢や卵巣年齢にかかわりなく、妊娠しにくい体質になってしまう(ここまでは前回違う医師に教えてもらったことと同じ)、子宮頸癌→人工授精、というのは、いうなればひとつのガイドラインのようになっているそうである。
もちろん「絶対に」人工授精を、ということは言えないし、「絶対に」自然ではだめだとも言えない。
決めるのは患者だし、医師は助言を与え、サジェスチョンを与えるだけだ。
「言われたほうからすると、“検査もしないでいきなりそんなこと言いやがって!”、と思われるかも知れないけど、どこの病院のどの医師に話を聞いても、同じことを言われちゃうと思いますよ」とセンセイはおっしゃった。ううむ。そういうことか。
「でもセンセイ、私、手術のあとに、妊娠も出産もできるっていわれたんですけど・・・」とイチオウ言ってみると、
「そりゃできますよ」・・・まあそれはそうか。人工授精による妊娠も体外受精による妊娠も自然妊娠も妊娠は妊娠だ。なんらかわりない。つまりはそういうことなのかと納得する私。
だからKさんがそれでも自然でいきたいというならそれはそれでいいと思う、
でも私たち(生殖医療の医師として)は、やはり35歳というのがひとつの目安になっている。
それを過ぎるとやはりどんどん妊娠は難しくなってくる。
だから人工授精をすすめるんですよ、
やっぱり早く妊娠させてあげたいから。
と、センセイは切々とおっしゃっていて、
ああこのセンセイって、すごく患者さんのことを考えているひとなんだなあということを感じる。
さすが友だちがすすめてくれるだけある。
ちなみに内診の際・・・これは婦人科の検査を受けた女性はわかると思うんだけど、
歯医者さんの診察台の脚の部分が両側に大きく開くような不安定な椅子に乗り、
もっとも無防備な体勢で診察をされるわけなのだが、
この内診の際に、Kセンセイは「はい、では見させてもらいますね」といって足のすねのあたりを2回ほどぽんぽんと軽く触り、さらに終わった段階で「はい終わりました」とまぽんぽんとすねを触る。
たったこれだけのことなのだけれども、ものすごい安心感があった。
こんなふうに内診をしてくれる婦人科の医師と私は初めて出会った。
これまでにかなり多くの婦人科の医師に・・・男性も女性も、若いひともベテランのひとも・・・診てもらったけれども。
Kセンセイは無意識でされていることなのかもしれないが、いずれにせよ、患者の不安を和らげる、ということを自然に、あるいは意識的にできる、ということは素晴らしいことだと思う。
内診後、再び診察室に戻り、話をする。
「人工授精や体外受精は、男性が反対することが多いので、
そうなると別ですが・・・」とセンセイが心配そうにおっしゃったので、
「それがウチの夫は、むしろ人工授精や体外受精は大賛成なんです」というと、それは珍しいですね、と笑っていた。
自然をするにしても、期限は決めたほうがいいですよ、たとえば年内は自然でいくけど、年明けから人工にする、とかね。早く妊娠したいですもんね、と。
そんなふうにして今回は納得がいくまでセンセイと話し合い、相談することができた。
結果、次回の排卵日までに、自然と人工のどちらにするかはペンディングとし、
自然の場合も考えて、各種の検査は進めておくこと、ということに決定する。
検査のスケジュールや、そのためにいつ、なにをしておくべきかもきちんと教えてもらえた。
ああすっきりした!すっきり!すっきりだ!!
早速、検査をふたつ行って、会計を終える。
あまりにもすっきりしたので中野まで歩いて帰ろう!と思い歩きかけたのだが、
待てよ、確か5キロとちょっと、歩いたら1時間はかかるということに気づき、慌てて駅に引き返した。
夫に病院が終わったとメール。
中野に到着し、スーパーマーケットで買い物。
いえへの道を歩いている頃に、夫から電話。
まだ出張先で講義を受けている最中というのに連絡をしてきてくれた。
病院の結果を少し話す。
夫も納得した模様。帰ったらゆっくり話そう、といって電話が切れた。
夜、夫が帰宅。
やっと帰ってきた!といっても1泊2日だけなんだけど。
帰ってきた夫と病院の話や出張の話しなどをしたり聞いたりする。
とても実りある出張だったようだ。よかった。
「お土産買ってきてね?」といっておいたら、新幹線に飛び乗ってしまったので買えへんかったから、と
東京駅で見つけたというおいしそうなお菓子を2つ、ハイ、と渡してくれた。
お茶を飲みながらふたりでいただく。ありがとう。お疲れさま。
朝ごはん。
パン。
昼ごはん。
「チャビィ」にて野菜スープ。
晩ごはん。
夫は出張で食べてきたのでひとりごはん。
茹でブロッコリー、茹でたまご、スプラウトと人参と玉ねぎのサラダ(最近のはやり)、しじみの味噌汁。
山崎ナオコーラさんの「指先からソーダ」を読了する。
いくつかの印象的なくだりがあった。