午前中、仕事。

夫を見送りがてら駅まで散歩し、ぶらっと一周してから帰宅、また仕事。


夕方、アレルギーの病院へ行く前に、サンモールの胃腸科がある病院へ行き、胃の内視鏡検査の相談をする。

先日の人間ドックで唯一遣り残した胃の検査。

私は慢性的に胃の調子が悪いので、1年に1度の検査を病院から促されているのだが、

嘔吐反射がきついため、バリウムは飲めないし胃カメラも鎮静剤なしでは飲めない。

今回人間ドックを受けた東京警察病院は、鎮静剤ナシの胃カメラ。む、無理・・・。

めちゃくちゃ腕がいい医師が入れてくれるというのも聞いていたのだが、これまで何度も「腕がいい医師」に騙されて、いやそれを凌駕するほどの反射がきつい私のこと、やはり鎮静剤は必須。

鼻から入れるタイプもあるのだが、鼻の粘膜も異常に弱くしょっちゅう鼻血が出るくらいなので、これまた怖い。

というわけで、胃だけ鎮静剤を打ってくれる病院を探していたのである。

これがありそうでそんなにたくさんはない。あっても遠かったり、電話での問合せの要領を得なかったりする。

そうして、そういえば・・・と、なんとなく覚えていたサンモールの病院へいきなり行ってみると、

鎮静剤をしてくれるとのこと。やったー!

早速診察を受け、胃カメラを飲むのは金曜日に決定。


「・・・ですが、胃カメラが苦しい苦しくないというのは、患者さんの問題ではなくこちら側(入れる側)の問題ですよ」と優しそうなセンセイはにっこり。鎮静剤はそんなに必要ないですよ、ウチでは、とのこと。

その言葉にほだされそうになるが、何度も同じ経験をしているので、鎮静剤きかせぎみでお願いします、と念をおさせていただいた。


アレルギーの病院に着いたのは17時過ぎ。

いつも日中に行っているので噂ほど混んでいないな~と思っていた病院が

恐ろしい混みっぷりである。びっくり。

私は治療のための注射だけなので、あっという間に終わってしまったが・・・。

昼間にさっと病院に行けるこの環境って、すごく恵まれていることだと思う。


同じ病院に友だちも通っているのだが、

多忙ゆえ病院に通うのがなかなか難しく、治療が進まないといっていた。それはそうだろうな。

そうして忙しいひとほど症状だって悪くなるはずなのでとても心配だ。


病院のあと、代々木八幡の白寿ホールへ。

テノール歌手のベー・チェチョルさんのコンサートである。


テレビでもときどき特集されているので、ベーさんのことをご存知の方は多いだろうが、改めて少し書くと、

1969年韓国に生まれ、ソウルの大学を卒業後、イタリアのヴェルデイ音楽院を修了し、その後、ヨーロッパ各地の声楽コンコールで優勝を重ねてデビューしたテノール歌手(リリコ・スピント)。ハンガリー国立歌劇場やマドリッドのオペラハウスなどでトスカや蝶々夫人、マクベス、ルチアなどを歌って、本場各地で大成功をおさめ、日本でも2003年に「イル・トロヴァトーレ」で大成功を収め、アジアオペラ史上最高のテノールと称される。

しかし2005年に甲状腺癌に襲われ、摘出手術の際に声帯と横隔膜の神経を切断。さらに右肺の機能も失ってしまう。しかし日本でのプロモーター、ヴォイス・ファクトリー代表の輪嶋東太郎さん等の厚い支援を受けて、京都大学の一色教授の元で声帯機能回復手術を受ける。一色教授からは「喋れるようにはなっても歌えるのは奇跡」といわれながらも(ベーさんの声帯は術後、糸で吊っている状態で、通常の声帯ではない)、厳しいリハビリを経て2008年前半より演奏を再開、「奇跡」の舞台復帰を遂げる・・・

とまあ、こんなふうに凄いひとなのである。

たとえていうとW杯で優勝したサッカー選手が、足に腫瘍が出来て義足となるも、懸命のリハビリを経てまたW杯の舞台に立つ、というくらいのことで、本当にこれは奇跡なんていえないくらいの奇跡である。


ベーさんの歌声は本当に素晴らしくて、聞くたびに胸が震えるのだが、

昨晩のコンサートもそれはそれは素晴らしいものだった。

もちろん全盛の声の張り、つやめきというわけにはいかないのだが、

前々回よりも前回、前回よりも今回のほうが、もっともっと声が出ている。深みもある。

進化している・・・そういう感じだ。

あんなに大きなことがあって、歌手生命を一度はあきらめて、それでも頑張って頑張って取り戻して、さらに進化しようとすること。


昨晩の曲目は、ベーさんが声帯回復手術を受けた後に、手術台の上で最初に歌った賛美歌「輝く日を仰ぐとき」にはじまり、ヘンデルの「涙流れるままに(私を泣かせてください)」、石川啄木と越谷達之助の「初恋」、キム・ドンジンの「忘れられず」、トスティ「かわいい口元」など、アンコール含め12曲の熱唱。

ああ素晴らしかった。

アンコールの最後の曲は「アメイジング・グレイス」。

「アメイジング・グレイス」は、結婚式の指輪交換の際に弾いてもらった曲でもあるのでしみじみとしながら聴く。


ベーさんの復帰をずっと支えている家族の方々、そうして輪嶋さん含めスタッフのみなさん、

そうしてベーさん、素晴らしい歌をありがとうございました。

また聴きにいきます。


ベーさんの歌の前に、輪嶋さんが少しステージで話をしたのだが、

ベーさんのコンサートの協賛をしている韓国大使館のひとたちと話していたときに、

大使館員たちがいっていたこと、としてこんなことを教えてくれた。

「私たちが日韓友好のために20年30年かけても開かなかった風穴を、ペ・ヨンジュンさんはたった一人で開けることができた。“文化”というのはそれだけ凄いものなのだ」


なるほどなあ。確かにペ・ヨンジュンをはじめとしたブームによって、

日本人の韓国という国、韓国人、に対する視線は大きく変わったと思う。

今年は日本による韓国併合からちょうど100年。

辛くかなしい関係性から、新しい関係性への100年としたいという輪嶋さんの言葉に激しく同意する。

輪嶋さんは「開いた穴に風をどんどん通すこと」をご自身の使命とおっしゃっていた。


夜、いえの近くでボス猫に遭遇。

さすがボスの風格でのっしりのっしり歩いている。

やはりチッチ攻撃は無効。

しかし写真を撮ろうとバッグをがさがさしていると、持っていたビニール袋までがさがさし、

その音で餌でもあるんかい?とばかりにじろりと振り向いた。やっぱり耳聞こえてるし・・・。


帰宅後、夫にひとしきりベーさんと、輪嶋さんの話をする。

もちろんボス猫の話も。



朝ごはん。

夫は昨日ののこりの蛤スープにうどんを入れて。

私はヨーグルト。


昼ごはん。

なし。


晩ごはん。

買ってきたお惣菜ですませる。

夫はお好み焼きを食べたそうだ。



中山可穂さんの「花伽藍」を読了する。