どうも最近眠くてたまらない。

毎日おおおそ2時に寝て、8時半に起きる。

6時間半の睡眠をほぼ毎日確保できるなんてことは社会人になってからなかったから

長い眠りにからだが慣れ、もっともっとと眠りを欲しているのだろうか。


友だちからうれしいメール。

時期は調整の余地があるもののいまの会社を辞めることがほぼ決まったという話。

そうするべきだと思っていたのでよかったと思う。

なによりもそう「決めた」こと。


なにかを手放すことで新しく手に入れられるものがある。

逆にいうと新しいなにかを手にするためには手放さなければならないときがある。


そうしてこれは実感として思うのだが

思っている以上に、手放すと新しい何かは入ってくるものなのだ。

仕事だけではなく。恋愛やそのほかのことをも含めて。

だから私はいついかなるときもおそれずに新しい扉を開けてほしいと思う。

私自身にたいしてもそう思う。


最近読んだ中島京子さんの「均ちゃんの失踪」に、

まさにそうだよなあと思ういくつかの心象や情景があった。


この小説は、ふらりと旅に出たまま戻らない「均ちゃん」と、その元妻の高校の美術教師、妻子ある人との恋愛から抜け出せず、淋しいときだけ「均ちゃん」を頼る有能な外資系重役秘書、「均ちゃん」の現恋人の若いティーン雑誌編集者の3人の物語だ。



3人の女性それぞれにそれぞれの物語があるのだが。

ここでは重役秘書、空穂の物語から。



空穂はちょっとしたことから再会した大学時代の素敵な先輩、高村・・・ただし妻子がある、と恋愛をしている。

気楽な恋愛、ではなく本気の恋愛。もう何年も続けている。

当然、大好きだからこそそんな恋愛につらくなるし、一方でだからこそ会社や友だちの前では明るく振舞ったりしてしまう。ひとりになるとその分、どっとくる。

ただ先輩の「愛しているのは空穂だけ」「空穂がいないと生きていけない」というような台詞に頼り、来年こそは一緒になろうという言葉に、知らないふりをしつつもすがっている。

もちろん高村も軽々しく空穂と交際をしているわけではない。それも空穂はわかっている。

ただ先輩がまだ妻子とともに人生を歩んでいるという事実だけは空穂のままならず、そうして何年も月日が経ってしまった。

そんな毎日の中で空穂はひょんなことからその有能ぶりを買われ、パリでの新しい会社への転職を促される。

流れに翻弄されるようにパリの会社の試験を受け合格し一刻も早くパリへ来るように促される空穂。

でもパリに行く、ということは、大好きな先輩と新しい局面を迎えるということ。

新しい局面、すなわち永訣。


これは高村にパリ行きを告げた夜の、空穂の述懐だ。



ただ、終わっていくんだなあというさみしい思いだけが胸を覆っていく。

家まで送ると高村が言ったのを、引きつぎの仕事が山ほどあるから会社に戻らないければならないのだと嘘をついて断って、ほんとうにオフィスに戻ってみると、フロアは明かりが消えていて誰もいなかった。

窓の外を見るともなしにぼんやりして過ごした。

「そんなに悪いばっかりでもないよ」

と、真っ暗なオフィスで独り言を言った。

「新しい現実が待ってんだよ。パリだよ。高給取りだよ。かっこよくない?」

しかしそれは、

「なに言っちゃってんの?かっこよくなんかないよ、あんた、もう三十六だよ。せめて二十九とか、三十一くらいだったらよかったんだよ。こんなんなっちゃってさー」

という声に、ともするとかき消されていく。

頭の中で、内心の声を戦わせていると、デスクの上に置いた携帯電話が光って揺れた。



手放すこと。

手放すことでこの手には「空き」ができるから、「空き」のぶんだけこころも寒い。

手放すこと。

手放さずにおいた年月の重さだけ、手放すことは億劫になる。怖くなる。


でも手放さないと空きはできないし、

手放さないとこの先も同じだけ年月は流れる。同じだけ。

私も昔は手放せなかったからそれはよくわかる。


私がはっとしたのは、

「あんた、もう三十六だよ。せめて二十九とか三十一くらいだったらよかったんだよ」という部分だ。

それは私がもうあとほんのすこしで36歳になるからわかることだ。

男性と違って女性にはどうしても生理的な「年齢」がつきまとう。

それは女性である以上仕方のないことだ。


でもね。たとえばこのままの現状だったとして。

そうしてたとえば41歳だったとしたら?54歳だったとしたら?63歳だったとしたら?

せめて三十六とか三十八くらいだったらよかったんだよ、ということになりはしないだろうか。

このいまというとき。


そんなことを思った。


期せずして中島さんにつづいて読んだよしもとさんの本(王国 その2)の最後に、こんな言葉があった。

(よしもとさんの小説でこんなふうな形で終わるものはとても珍しいと思う。途中巻とはいえ)


「また来ます。」

と私は、ついこの間まで知らなかった人たちに挨拶をする。その人たちは笑顔を見せる。そうやって、私という波紋を、宇宙の記録の中にどんどん刻みつけていく。

さらに漕ぎ出していけ、私よ。新しい日常の中に、この小さな光をもって。


私の毎日はつづく。

あなたの毎日も。

なにをしても、なにもしなくても。


昼間、減感作療法を受けに代々木の病院へ。

最後に残しておいた銀行の名義変更手続きも終える。

いくつか銀行に口座を持っているのだが、三菱東京UFJ銀行がもっとも難儀。

なにしろカードも没収されてしまうのだ。そのためこの銀行だけ最後まで変更しないでおいたのである。

姓を変更するのはなかなか難儀だがこれでカードを含めすべての変更を終了する。


雪が降りそうだからと夫が早めに帰宅。

確かに夜にたくさんの雪。

ベランダの薔薇とゼラニウムを養生すべきか迷ったが、

天気予報ではこの雪もそんなにもたなそうなのでそのままにする。


朝ごはん。

夫はごはんと味噌汁。

私はチーズトーストとヨーグルト。

ここのところいまいちなチーズトーストが続いていたので自分でつくって食べる。

アンチョビを載せて焼くのがお気に入り。


昼ごはん。

朝たくさん食べたのでお腹が空かず。


夜ごはん。

トントロの鉄板焼き、ナムル4種(もやし、ぜんまい、ほうれん草、人参)、しらすおろし。

トントロはキムチとスライスした大蒜焼きと一緒にサンチュで巻いて食べる、サムギョップサル風にしていただく。

ナムルは結局、ごはんに混ぜてビビンパにして食べる。

思えばわが家の食卓はやはり韓国料理が多いなあ。国際結婚の一面を見た。


よしもとばななさんの「王国 その3 秘密の花園」を読了。