今年からはすこし自分と向き合う時間がほしいなと思い
仕事を減らした。
新しい会社からの仕事は請けない。
以前からお付き合いがある会社さんからの仕事であっても、重い仕事は信頼できるパートナーさんに渡す。
というかたちで「今年の仕事スタイル」をつくりつつあった。
はっきりいって、すごくしあわせだった。快適な毎日。
クライアントさんからのメール着信に怯えることもなく
メーラーを立ち上げられる幸福。
だいたいそもそも私は家事がだいすきだ。
いえにいて、そうじをしたり洗濯をしたり天気のいい日は布団をほしたり
ささやかなベランダガーデニングをしたり今度植えるものについて検討したり
今晩はなにをつくろうかな?と昼くらいからぼそぼそと考えはじめて
八百屋さんや魚屋さんにおまけしてもらったりしながら買い物をし
晩ご飯をつくっているうちに夫がおなかをすかせて帰宅。
お風呂わいてるよーというとじゃあ風呂入ってくるわと夫がお風呂に入っているあいだに
晩ご飯のしあげを終え、風呂上りのビールを飲んでいるあいだに膳をととのえる。
というような、生活。
これが私の理想の生活であり、
1月以降、それを実践していたのである。
しかし。
昨日、クライアントさんから一本のメールが届いた。
そのクライアントさんは私の重点クライアントさんであり、
数年前にこの仕事をはじめてからもっとも信頼関係を築いてきたお客さまなのだが、
それゆえに精神的にも時間的にもかなりの負荷を強いられていた、
某大手メーカーの販促課長さんである。
結婚するならさ、もう仕事辞めたほうがいいんじゃない?
と、結婚の報告をしたときに、そのG課長は意外なことをいった。
てっきり結婚してもバリバリよろしくね!といわれると思っていたし、
そのクライアントさんについては結婚後も自分で掌握しようというか、掌握しないといけないだろうなと思っていたのだ。
・・・だってさ、Aさん(私の旧姓)は仕事バリバリしたいと思っててもさ、
旦那さんにしてみなよー。
毎晩奥さんが深夜まで帰ってこなくてさ、嫌だと思うよー。
まあさ、仕事辞めなくてもいいけどさ、
19時以降まで会社にいちゃだめだよ、あと土日出勤も禁止ね。
部下にも、Aさんに夜メールするなって、徹底しとくからさ!
と、そのときにGさんは続けた。
さすが旧い業界だけあって、確かにその会社は女性の社員はみんな事務職だし、
Gさんの奥さんも元その会社のひとで、結婚退職したと聞いている。
そうしてGさんがそこまでいうなら、
それなら私はGさんの会社の仕事も無罪放免!
信頼できるひとにその会社の仕事をそっくり預けたのである。
そのGさんからメール。
「こんにちは!Gです」というサブジェクトを見た瞬間からもう中身が予想され
いやーな予感が渦巻いた。
そうしてやはり中身は予感を覆すことなく、
前線に復帰して欲しい、
本当に申し訳ないのだけれどもやっぱり一緒にやりたい、
戻ってきて欲しい、
という内容だったのである。
あああ。そんなことじゃないかと思っていたよ。
せっかく足を洗ったと思っていたのに。
もちろん仕事をしていくなかで、
こういうクライアントさんの声はとてもうれしいものだ。
それにこのご時勢、特にこの業界はものすごい不況風。
そのなかで仕事をお断りするということじたい、とても贅沢だということはわかっている。
でもねえ。
洗いたかったんです。足。
ただいろいろな状況、を鑑みると、やはりいま前線に復帰しないことには
どうにもならないこともまた事実。
ということでまた仕事が入ってくる生活に逆戻り。
あああ。
まあ3月まではオフ、4月以降はまたオンでと思っていた、
オンの内容がもとに戻っただけでオン状態には変わりないのだから
と自分を納得させることにした。
さて昨日。
大学時代の恩師、O教授と食事。
最後に会ったのはたぶん7年くらい前のことだと思うから
久しぶりの対面である。
大学の研修室で待ち合わせをする。
早めに着いたので母校のキャンパスをぶらぶらしつつ
ちょうどコピーを大量に取る用事があったので図々しく生協に入り、コピーカードまで購入しコピーまでしながら時間をつぶす。
生協のコピーはコピーカードがないと使えないことも
500円で購入したコピーカードに30円分のおまけがついていることも
コピーカードのデザインも
私が学生だった15年ほど前と変わらない。
そんなことにも感慨を憶えながら時間がきたので研究棟へ赴く。
先生の研究室は学生のころと変わらない、研究棟の2階の隅にある。
先生に会いに毎年ほぼ2回ほどアポイントなしで訪問しているから
(アポなしなだけあっていつも先生は離席中で退散していたのだけれども)
それは確認済み。
私が学生だったころは古くさい校舎のなかで唯一モダン、だがひそやかな研究棟、という印象だったのだが
その後に建てられた新校舎や建築物のおかげで研究棟はますますひっそりとした雰囲気になっている。
いまはちょうど大学も春休み。
学生も教職員の方々もほとんどいないからよけいに自分の足音が気になる。
ドキドキしながらエレベータを降りると、
O先生らしき人影がすでに廊下で作業?のようなことをしていて、
誰もいないしんとした廊下をしずしずと進み、コンコンと研究室をノックするとなかから「はい」という先生の声、おそるおそるドアを開ける私、という想定がすっかりと覆ってしまった。
緊張しいの私は、久しぶりのなにか、初めてのなにか、重大ななにか、をおこなうにあたって
たいていどういう行動を取るかをシミュレーションしているのだが
このシミュレーション意外のことが起こるとかなりあたふたしてしまう。
そんなわけで、今回もけっこうあたふたとしてしまった。あああ。
先生、ゴメンナサイ。
やあ、久しぶり!と村上春樹のように(想定)おっしゃて右手を差し出す先生。
お久しぶりです、ご無沙汰しております、と同じく右手を差し出し、握手する私。
それから研究室に招じていただき、しばしの雑談のあとに
鰻屋さんへ。
大学の最寄り駅のすぐそばにあるお店にもかかわらず、
まったく見たことも聞いたこともないのはさすが学生と鰻は遠い存在であるからか。
すすめられるままに肝や肝吸い、うな重をいただく。
どれもとてもおいしい。
丁寧に仕事がされ、鰻好きの私もすっかり満足である。
その後、カフェゴトーへ。
さすがにチーズケーキは食べられませんねえ、というと
先生は、持ち帰りにしたらどう?とおっしゃって、なんとお持ち帰りにプレゼントしてくださったのだ。
しかも夫の分まで!
先生とはいろいろな話をした。
近況からいま読んでいる本、興味のあること、私も知っている先生の教え子たちの近況。などなど。
本当は話すつもりがなかったこと(これから勉強する予定だったこと)までぺろりと言ってしまったりする。
(いま読んでいる本はなに?ときかれて、持っていた本がたまたまその勉強する予定だったことの本だったのだ)
私は学生時代に、先生の講義をとおして
いまの人生のほんとうに役立ったと思える
いくつかの啓示を受けているのだが
今回もまたすごくいいことを教えていただいた。
毎日きちんと振り返れないような人生を送るべきではない。
その1の解釈。
振り返ることを恥ずかしく思うような、あるいは振り返っても思い出せないような日々を送るべきではない。
その2の解釈。
一日あったことを振り返る、ほんの少しの時間も持てないような日々を送るべきではない。
私は先生がおっしゃったことを、
このふたつの解釈をもって理解した。
先生が言ったことばはもしかしたら違うニュアンスだったのかもしれないのだけれども
私はそのように解釈した。
そうしてその解釈について、
確かにそのとおりだと強く思う。
日々のなにげない行動に意味をつけること。
意味をみつけること。
だからこそ、つないでいけること。
私がここ数年、したいのにできないと思っていたテーマこそまさに
点を線にすることだったのだ。
ばたばたとしていてとりこぼしているなにか。忘れていくなにか。
そういうことをいまとても残念に思っていたから、余計にそう思うのだった。
てはじめにこの日記を書く時間をもうすこしきちんととろうと思う。
ささやかなことだけれども。前はそれができていたわけだし。
まずはそこからはじめようと思う。
あなたは影響を受けやすいからねえ。
と先生はまた笑うだろうか。
はい、そうなんですよ。私はとても影響を受けやすいんです。
だからこそ、これまで時折ぶらりと「影響を受けたくて」先生のところに行っていたのかなとも思う。
また実際に会えなかったことだらけだったけれども、
「先生に会いに行く」という行動をすることこそが、私のなかでは大事なのかもしれない。
その時点で既に私のなかには学生時代に受けた啓示を強く意識するなにかが起きていたのだと思う。
先生に会いに行く、というのは、ある意味、私の原点回帰のひとつなのだろう。
話は変わるけれども。
カフェゴトーのマスターが学生時代と全然見た目が変わらないので
「マスターは全然変わらないですねえ」と先生にこっそりいうと
「あれは息子さんですよ」とおっしゃるではないか。
知らなかった!そうだったのか・・・さすがにあれからずいぶん時間が経ったのだもの、
マスターが引退してもおかしくはない。
それにしてもそっくりな息子さんだなーと瞬時にいろいろな想いが頭をかけめぐっていたら
先生の冗談であった。まったく・・・。
マスターは「ボクは年に1冊くらいしか本を読まないから年を取らないんですよ」と言っていて、
そういう会話ができるのは素敵だなと思う。
朝ごはん。
夫は筋クッパと昨日ののこりの焼き明太子。
私は昼ごはんに備えて食べずにおく。
昼ごはん。
鰻の肝、うな重、肝吸い、漬物。
堪能する。
夜ごはん。
サッカー観戦をしに近くのスポーツバーへ。
昨日はBS放送だったので自宅で観戦できなかったのである。
カルボナーラ、軟骨からあげなど。
おやつに先生からお土産でいただいた
カフェゴトーのチーズケーキを夫と共に食べる。
これはうまい!とぱくぱく食べている。
「このチーズケーキが私のチーズケーキの原点なんだよ」といったら夫は笑っていた。
これが原点のチーズケーキだ。