昨日乗ったタクシーの運転手さんは
クラシックマニアだった。
あらゆるマニアにいろいろなパタンがあるように
クラシックマニアにも当然、いくつかの類型があるのだが
初老の運転手さんは「指揮者やオケ違いの同じ曲を聴く系」と「アンプ」のマニアだった。
たとえばマーラーの3番などはかなりの組み合わせのレコード(当然、レコードである)を所持し
「この指揮者の場合はこう」とかいうのを見つけてほくそえむ。
たとえばアンプは当然手作りする。
とか、そういうこと。
そもそもなぜクラシックが好きかわかったかというと
車内にクラシックがかかっていたからである。
クラシックをかけているタクシーはとても珍しい。
あれ?と思い、お好きなんですか?と聞いてみると、
実は・・・といって話をしてくれて、
それから20分少々の乗車時間をずうっとクラシック談義で過ごす。
とても楽しい時間。
レコードの名盤が100円くらいで売っているので
うれしくてついつい買っちゃうんだよねえ。
だって100円だよ!と
とこちらがうれしくなるくらいうれしそうに言うので
ですよねえ、昔は3800円でしたよね、レコード。
とあいのてを入れると、
そうそう3800円!と盛り上がったり。
この前買ったのは、あの誰だっけ?ピアニストで・・・
というので
アシュケナージ?マルゲリッチ?
ジャズですか?あ、ビルエヴァンス?
いや、いや、ああすみませんね、年齢をとると名前が出てこなくって・・・あのなんでしたっけ、
イージーリスニング・・・
ああ、リチャード・クレイダーマンですね!
そう!渚のアデリーヌ!!
とふたりで唱和。
渚のアデリーヌ。
うわあ。もう発音したのじたい、25年ぶりくらいである。
昔めちゃくちゃ流行ったものだ。
あの甘いところがあまり好きではなかったのだけれどもね。
楽しい時間はあっというまに過ぎ。
お互いに、楽しかったです、どうもありがとうございます、といいながら
車を降りる。
素敵な運転手さんに感謝である。
山本文緒さんの「群青の夜の羽毛布団」を再読する。