雨が降ると言っていなかっただろうか。

傘を持って家を出たのにすっかりと晴れている。


ここのところ天気予報があたらない。

気温はおおむね合っている気がするのだが

晴れとか雨とかくもりとか

そういう肝心なところがはずれる。

はずれるときの印象が強いから「いつも当たらない」と思ってしまうのだろうけれども。

それにしたってすこしあたらなすぎやしないか。


と、いらない傘を見ながら思う。


だいたい私は傘を持ち歩くのがきらいだ。

家を出るときに雨が降っていなければ傘を持っていかない。

と豪語していたくらいの傘ぎらいだ。

恋人もまえは同じタイプだった気がするのだが

ここ1~2年くらいでやたらと天気をきにしはじめ、

毎日ネットで天気予報をチェックして降水確率を報告してくれる。

今日ははれやで、とか、夕方から雨やって、とかいうふうに。


おそらく私が。

朝、起きるといつも

そとがどんなにぴっかぴかのお天気だろうと台風の豪雨だろうと

今日ははれ?とか今日はあめ?と聞く習性があるせいだと思うのだが

(そしてそういう習性があることに、ごく最近気づいたのだが)

それにしたってぜんぜん雨のかけらも感じない午前中に

午後の降水確率が50%だからと傘を持っていくようなひとではなかったはずだ。


恋人がそのようにして傘をもっていくのに

私はいらない、ということはなんだかできずに

(だって玄関でいつも「はい」と傘を手渡されるのだ)

こうして私も傘を持ち歩く可能性が高くなってしまった。


いらない傘ほどいやなものはなく

だから天気予報はより正確であってほしいと願う。

願いむなしく今日も晴れている夕方だ。


雨がきらいなわけではなくて(それは晴れのほうが好きだけど)

傘がきらいなわけでもない。

ぶらぶらと所在なげに腕からぶらさがる無用な傘が苦手なだけで。


川上弘美さんの「此処 彼処」を読了する。