結婚することになった。
冗談半分で、この日記のジャンルを「国際結婚」(と「グルメ」)にしたのが1週間前。
その時は、こんなふうになるなんて想像していなかった。
もちろん恋人とそのうち結婚することは
ふたりの間では決まったことで。
でもそれはあくまで「そのうち」で。
「そのうち」とは恋人の会社が軌道に乗ってから。
たぶん、数年のうちに。
という話を、去年だったか一昨年だったか、ふたりで話したのだ。
東高円寺の、青梅街道に面したイタリアンレストランの2階で。ランチタイムもとうに終わった昼下がり。
しかも導入は互いの仕事の話だったから、ロマンチックとは程遠かった。
でも私は、恋人が自分の将来を、ふたりの将来としていることがわかって。うれしかった。とても。
今日は恋人のレーシックの1週間後検査で、
その前にちょっと書類整理があるから事務所に寄って、
だからその前に、つまり朝から、いつもの喫茶店へ行った。
いつもの喫茶店。すなわち銀座ルノアール中野店である。
モーニングセットを頼み、
しかもオーダーしたものが出てくる前にちょっとトイレ行くねと席を立ち、
トイレから戻ってきたときだった。
今度の夏休み、京都に旅行いかへん?
と思い出したように恋人がいう。
わぁいいねいいね、京都大好き。と私。
瞬間、私の脳裏には、さまざまな寺社仏閣が浮かんだ。
京都!久々の京都だ!
京都へは以前は毎年のように旅行していたのだけれども、
故郷を京都にもつひとが恋人になってからは一度も行っていない。
紹介されないのに行くのも嫌だなとか、かといってひとりで行くのも嫌味だなとか、そんなふうに思っていたから。
だから単純に「京都旅行」は嬉しくて、喜んでいたら、恋人がひと呼吸置いて言ったのだ。
親に紹介したいから。
恋人の両親に会う。
そんな日が来たらいいなと思っていたけれども
来ないかも知れないなと諦めてもいた。
在日韓国人の恋人と日本人の私。
よほどの親日でない限り、乗り越える壁は高いだろう。
恋人の一族はましてや全員韓国人だ。
私の家族は国籍のちがいをまったく気にしないひとたちだし、
両親とも恋人と会っていて、すごく恋人のことを好きだといっている。
でも私は?私のことは?
恋人との将来を考えるほど、きっと簡単ではないと思っていた。
私が日本人だって知ってるの?
おそるおそる、聞かざるを得ない。
でも頑張って聞くと、
知っとるよ、もちろん。
と明るく恋人はいう。
大丈夫なのかな、
それでも心配そうにいうと、
昔は確かにいろいろあったけど、いまは関係あらへん、親父もおかんも大丈夫やし、親戚もばあちゃんもみんな喜んどったから。
それにもし反対されても俺は結婚したけどね、
会社辞めてなければもっと早く結婚してたけど、会社つくってばたばたして待たせてしもうたし。
そんなことを恋人はいう。
ウチよりナオのとこは大丈夫なん?在日でも。
恋人も心配そうに聞くものの、
家族は最初から知っているし、歓迎こそすれ反対する家ではない。だから大丈夫。
私はもう、恋人の家族が私を受け入れてくれそうだというそのことだけで
十分にいっぱいいっぱいで、いろいろなうれしい言葉ぜんぶがうれしくて、
ああ待っていて良かったなあと心から思う。しみじみと。
不思議と。こころは静かだ。
しずかにゆっくりと、私が喜んでいる。
そんな感じ。
思えば長い、たくさんの道のりだ。
結婚はゴールではもちろんないけれど
途中途中でいろいろなことがあり、諦めや焦燥や、
もちろんしあわせや、
そんなことがふたりのあいだにはたくさんあった。
だから。なんていうんだろう。
感激というよりは感慨。
今年の夏休みに、互いの両親に挨拶に行くこと。
派手な式は苦手だから、披露宴はしないけど、式と、あとは親族とちいさな食事会くらいにをすること。
でもウェディングドレスを着ること。
来年の春くらいに。
そんなことをぱらぱらと話す。ゆっくりと話す。
結婚することになった。
今度は夢の話ではなく、本当の話。
またしてもロマンチックのかけらもない、
でもとてもしあわせでたいせつな話。
それが今日のこと、
今日という日のこと。
(私たちをリアルに知る友だちのみなさまへ。
なんとそういうことになりました。
正直、我ながらびっくりしています。
またご報告しますが、まだ先のことゆえ、
そっと静観していてくださいませ)