出張。
新幹線にも電源がある。便利な世の中になったものだ。
おかげでまた仕事し放題。
昨晩遅く、確か12時を過ぎていたと思う。
後輩から電話がくる。
一時期、同じグループで仕事をしていたことがあり、
またそれ以外ではずっと以前から知っていて、
たまにはランチに行ったりするような、
そんなふつうの同僚よりは仲がよく、かといって親しい友だちではない、というような類の男の子である。
仮にRくんとしよう。
ナオさん、元気?とRくんはいう。
元気よー。最近、なにやってるの?と私。
その子はとても優秀な子でかつバイタリティもある。だから知らないうちにいろいろなことをはじめていたりするのだ。
しばらくお互いの近況やらなにやらを話しているうちに、
ちょっと最近、びっくりするようなことがあってね、とRくんがいいはじめ、
要は3年付き合っていた彼女に突然別れたいといわれたこと、
それも海外へ数日間出張中のところに電話がかかっていわれたこと、
しかもその子は既にほかに彼氏ができていて、さらにその彼氏はRくんの職場の後輩であること、
それもRくんが後輩にその子を紹介したことがあるのだということ、
などを淡々と話しはじめる。
そうなんだそうなんだ、と話を聞くうちに、
Rくんは「でもね、ナオさん。ぼく、つらくはなかったんですよ」と語りはじめた。
「なんていうのかな、彼女に、ボクと別れたいと思うのはなんでなの?と聞いて、
それで納得できたから、ボクがそこで別れを選択しないと、みんなハッピーになれないでしょ。
それでね、ボクが、なんでつらくなかったかというとね、
・・・ちょっとその直前に、ある研修というかセミナーを受けていたからなんですよ」
で、出た!セミナー!!!!
そのセミナーとはあのセミナーであろう。
中身はすっごくいいのだが(これは事実らしい)、
勧誘がほとんど怪しいネットワークビジネスに近いくらい強引で有名なあのセミナー。
「・・・で、ナオさんと同じ部署の、あの○○ちゃんも受けてるんですよ」とRくん。
知ってる、知ってる。○○ちゃんが受けていたことも知ってるし、
というかその勧誘手口が悪名高いけど内容自体はすごくいいセミナーは、私のもといた会社ではすごく有名で、結構な人数のひとたちが受けているし、だいたい親しい友だちも恋人も受けたことがあるくらいなのだ。
親しい友だちは純粋に研修内容を学ぶためが目的だし(確か)、
自己啓発が好きな恋人は、そのセミナーの中身がすごくいいと聞いて興味を持って受講していたはずだ。
私もRくん以外に、昔の職場の先輩(といってもほとんど話したこともないひとだけど)から
同じように勧誘を受けたことがあった。
そして同じく辟易とした。
ちょっと恍惚とした感じの目つき、言葉遣い。まったくあのときと同じだ。
まあ今回は電話だったので目つきはわからなかったけど。
私はこの手の自己啓発系のセミナーに「勧誘される」という行為がとても苦手なので、
ああ残念ながらこの1本の電話は勧誘であった、とわかった瞬間から手元のパソコンを立ち上げ、うんうんじゃあまあ私は研修興味ないしとか、仕事がんばってね、とか相当おざなりに接し(その時点で電話を切るほどのことはできないのだ、性格的に)、まあなにかあればメールでもしておいてね、といってしばらく話して電話を切った。
それにしてもなあ。
なんでこういう・・・なんだか残念だ。
自分が出会った、知りえたいいものをだれかに伝えたい、という気持ちは私にもある。
というか私はそういう気持ちが、ふつうのひとより強いほうだと思う。
食べもの然り、景色や本や音楽然り。
素敵な素晴らしいものに出会うと、この素晴らしさをだれかに伝えたいなと思う。
親しいひとには共有したいなと思う。
だけど。
それとこれってちょっと違う。気がするんだけどな。
なんだかなあ。
電話を切ったのが結局1:30(深夜)で、恋人は寝てしまっていたので、
翌朝、ちょー聞いてよ聞いてよ、後輩が例のセミナー受けたらしくて昨日の電話はそれだったよ、と早速報告をした。
あーあのセミナー、ホント中身はいいんやけどな、強引やしなあ。
もったいないよな、黙ってたっていいんだから広まるやろうに。
と恋人。ほんとそうだよね。
ないだろうな、と思いつつ、
だれか勧誘したことある?ないよね?と聞くと
あらへん。とばっさりひとこと。
オレはセミナー受けたくて受けたけど、だからといって勧誘する筋合いはない。
うん、確かに。
しかもそのセミナーの場で、なんと「この素晴らしい体験(=セミナー)を、ぜひだれかに紹介しましょう」というコーナーがあるそうで、その場で電話しろ、といわれるらしい。
恋人はそういうのが大嫌いなので、その時間はトイレに行くとかいって煙草を喫っていたといって笑っていた。
ああよかった。そんな恋人が恋人で。
と今日も朝から思うのだった。
さてもうすぐ名古屋です。
名古屋勤務10年、去年から沼津に転勤した後輩に
名古屋でおいしいもの教えてーとメールしたら、
すごく丁寧なおいしいものリストを返信してくれた。楽しみである。