すなわち、



1)クラシックマニア

これはご想像通りのひとで、たいていひとりでやってきている。

そして9割以上が男性である。

彼らはだいたい奥まった席にひっそりと佇み、アンプの音に耳を傾けつつ

たまに入ってくる客をうっすらと目を細めて見やる。

本を片手に持っていることが多いがあまり目を通すこともなく、

1時間弱をそこで過ごし、またひっそりと帰って行く。

店の方が流している音楽を愉しむことをよしとし、リクエストなんて無粋な真似はしない。



2)クラシックファン

わりとクラシックが好きですよ、演奏会にも1年に数回は行きますよという部類の人間で、

もちろんマニアと呼ばれるひとたちにはクラシック音楽への造詣は遠く及ばない。

音楽を聴きつつ本を読んでいることが多いが

聴きたい曲調が流れないとしびれを切らし、店のひとの選曲の流れを軽く無視した

リクエストなどをしてしまう。

たいていの時間を本を読みながら過ごし、滞在時間も長い。



3)喫茶店として利用するひと

おそらくクラシックは嫌いではないと思うが、ふつうの喫茶店と間違えている、

あるいは名曲喫茶だとしりつつ喫茶店の側面だけを利用しているひとたち。

たいていは2人以上で訪れ、ひそやかに話をしつつ、

ときにはちいさく笑い声を立てたりし

そのたびにクラシックマニアが片方の眉毛を上げているのに気づかない。

小一時間で場違いさに気づくせいか退出する。



4)睡眠をとりにくるひと

これがもっとも驚き!だったのだが。

実は名曲喫茶の収益を支えているのはこの層なんじゃないか?と思うくらい、結構存在するのである。

彼らはたいていクラシックマニアよりよほどお店の常連さんである。

「おう!」みたいな感じでお店に入ってきて、「いつもの」席におもむろに行き、

そうして寝る。寝るのである!それも着席後、ほぼすぐに!!!

その寝っぷりの鮮やかさたるや。注文した珈琲が届く前に、もう舟を漕ぎ始めているくらいなのだ。


そういえば小学校や中学校のころ。

音楽の授業の「音楽鑑賞の時間」に、感動して涙さえ浮かべている私を尻目に

思いっきり眠っている男子が相当数いたものである。



これまで何店かの名曲喫茶に足を運んでいるが、

どのお店にも、本当にこの「寝ているおじさん」がいる。

彼らは一様に健やかに、幸せそうな寝顔をしている。

確かにここは薄暗く涼やかで(あるいはほのあたたかく)、

また彼らを睡眠に誘うに足るクラシック音楽に満ち溢れている。

ああそうか。ここは格好の睡眠スポットなのだなあ!と思うと、

なぜかこちらまで幸せな気持ちになるのである。