ジビエシーズンの最後に、トナカイはいかがですか。


いつの間にか、ジビエのシーズンも、もう終盤。
最後にご案内するのは、トナカイです。


購読しているメールマガジンの冒頭の一説を読んで

ふうんと唸る。


ふうん。そうか。トナカイか。

ふうん。そうか。ジビエか。

ふうん。そうか。もうすぐ春なのか。


実はジビエが苦手である。

本当に美味しいジビエを食べたことがないからそういうんだよといわれることも多々あるが

まあ確かにそのとおりでもあるのだが

野性味にあふれた味、というのに怖気を抱いてしまってついついメニュからはずして考えてしまう。

ジビエ好きの友だちと食事をする際に

すこぅしだけわけてもらってそれで満足する。


そういえばトナカイのジビエは食べたことがない。

まあそもそもそのような理由でジビエそのものをあまり食べたことがないせいもある。

トナカイっていったいどんな味がするんだろう?

脂っぽくて筋っぽい。気がするのだがどうだろう。

スウェーデンなどではよく食べると聞いたことがあるから

そこまで不味いものでもないのだろうけれども。


ずっと以前に友だちと、北京で宮廷料理なるものを食べた。

中国に駐在していた先輩から

「宮廷料理?決して食べておいしいものじゃないけどそこまで食べてみたいならためしに食べてみたら」くらいに言われ、確かにそのとおりの膳だった。


一皿目の、飾り包丁を入れた生野菜はおいしくいただけたのだが

それがマックスおいしい、で、

その後は右肩下がりに下降し、最終的にはひどく具合が悪くなり(たぶん油が合わないのだと思う)おそろしい背中痛に見舞われ、友人たちもみんな気持ちが悪くなりホウホウノテイでホテルに帰ったのであった。


宮廷料理の店としては確かもっとも有名で、

フルコースが当時の北京の大卒初任給と同額、という金額。

日本円にしたら1万円くらいだったが、それでも旅行そのものの料金が5万円くらいだったから

私としてはかなりの高額の食べ物だったのだ。

それがもう、本当に涙が出そうなくらい不味かった。

不味いというと語弊があるならば、まったく口にあわなかった。

燕の巣とか、駱駝の筋とか、出てくる食材もなんだかすごいし。

記憶にあるのは飾り包丁の美しさと、忘れがたい背中の痛みである。


宮廷料理にはジビエは入っていなかったけれども

ジビエというとなぜかこのときに食べた駱駝の筋を思い出してしまうのだった。なぜか。


ジビエが終わりということは

もうすぐ春、ということである。

春。待ち遠しい春。