5月の末の週の日曜日に結婚することになった。
急にそれが決まったので、
式場をおさえないといけない。
そんなに派手なお式をするつもりはないのだけれども
キリスト教でもないのにウェディングドレスでバージンロードを歩きたいという夢は捨てがたく
なので教会風のお式が挙げられて、
こぢんまりとした披露宴ができる都内のホテルで挙式をしたいという希望を持っている。
海の見えるところがいいなとか
軽井沢に旅行に行けばいったで山の教会もいいなとか
海外で挙式をした先輩の写真を見るとそれも素敵だななんて夢想しつつも
結局はそんなところだ。
私は仕事でばたばたとしている時期なので
恋人が式場を探してくれることになり
ちょっと不安に思いつつもお任せすることにする。
なぜ不安かというと、恋人がモノを選ぶ基準というのは
経済効率だったりするからだ。
「オレにとってはユニクロですら高い」と豪語しているくらいのヒトなのだ。
そんなこと(だけ)で結婚式場を決められたらたまったものではない。
そうして案の定、恋人がにこにこしながら「決めてきたで」という式場は
葛飾区だか江東区だかにあるその名も「エコノミーホテル柏木荘」という場所である。
葛飾区や江東区って・・・だってウチは中野区だし、どう考えても交通の便が悪いだろう。
友人たちはみな東京の西のほうに住んでいるし、
恋人も私も、親兄弟は新幹線でやってくる。
(葛飾区や江東区が悪いわけではありません、念のため)
しかもホテルの名前がすごい。エコノミーホテルだよ。エコノミー。
このせちがらい世の中とはいえ、そんな名前を冠に標榜するホテルっていったい。
不安になってネットで検索すると、一泊7千円のホテルである。
しかも写真がすごい。
熱海や草津にありそうな、ひと昔、いやふた昔感が否めない
ものすごーくさびれた感じのホテルなのである。
いくらなんでも、ハレの舞台をここでするのか・・・
そう、いくら恋人が選んできてくれたからって、私には夢があったのだ。
たとえば海のそばならアマンダリのようなホテル。
もしくは鎌倉とか逗子のほうにある海が見えるレストランでもいいな。
たとえば山なら軽井沢のブレストンコートにある教会。
(ブレストンコートには以前友だちと泊まったことがあり、木の教会と石の教会、どちらが素敵!?なんていいあったものだ)
都内なら従妹も友だちの妹さんもお式をあげた八芳園。
(バージンロードが短すぎるのが珠に瑕だがそれ以外はとても素敵!)
少女趣味だと笑うなら笑え。
これでも、そしていまだに、結婚式というものに対しては
過剰な思い入れがあるのである。
それがエコノミーホテルですよ。ううう。
とはいえもう予約をしてしまったものなので、
一度下見をしてみて、その上でできることならキャンセルし、
恋人には悪いけれどもやっぱり自分で式場を探そう!たとえどんなに忙しくても!!と思い定め、
翌日、エコノミーホテルに自ら乗り込んでみると、
意外にも!そう、意外といいホテルなのである。
古びた、と写真では感じた部分も
行ってみるとクラシックホテルのような古きよき感じであるし
スタッフの方々の接客も素晴らしいものがある。
八芳園やブレストンコートとまではいかないが
それでもまあ。ここでいっか、しかも恋人が嬉々として選んでくれたところだし。名前は変だけど。
ということで恋人に、ここにするよ、と電話をすると
そうやろええところやろ、といっている。
さあこれで式場はなんとか決まったし、
次はドレス選びだわ!
式場まで来たのだからついでに見せてもらっておこう、と
ホテルのひとに聞いてみると、
なんとレンタルドレスがないというではありませんか。
ガーン。
子どものころはオーダーメイドでドレスをつくろうなんてことを思ったものですが
さすがにいまはそんな不経済なことをしようとは1ミリも思っていない。
さて困った、ドレスはどこで探したらいいのかな?
と思ったところで目が覚めた。
なんだかいろんなことがすごくリアルで、
たとえばエコノミーホテルから見た木々や川の色とか
(エコノミーホテルの隣は渓谷のようになっている)
そうやろええところやろという恋人の口調とか
5月末の式なのにいまは5月の第1週の設定で、
時間がないよと焦る自分とか全然焦らずに鷹揚に構えている恋人とか
しかもそもそも無理がある日程なのにふたりとも敢行しようとしているところとか
もうめちゃくちゃ現実味たっぷりで笑えた。
ちょー聞いてよ聞いてよ、今日こんな夢みちゃったよ、
エコノミーホテルだよ!と恋人に話したら
恋人もげらげら笑ってそれにしてもすごい名前のホテルやなあといっている。
ホントだよ。
この夢を見たのは年末のことなのだが
ちょうどそのころ、恋人の先輩(であり親友のダンナさまでありとてもお世話になっている方)と
メールで「恋人と私が結婚式を挙げるとしたら」というような
やりとりをしていたので、
きっとそのせいであんな夢を見たのだろう。
それにしたっていろいろなことを暗示もしくは明示していておもしろい。
たとえば見た目や名前だけではないものの価値についてとか。
そういえば。
強がりでもなんでもなく恋人との結婚について焦らなくなった。
それはたぶんいま一緒に暮らしていること、それによる安心感と
さらにはすごくいろいろなことを話したり話し合ったりすることで
ふたりの向いている方向が一緒で
ふたりの思い描いている将来がいま一緒だということが
きちんと腹に落ちている、私の場合はそれがいちばんの理由だろう。
結婚はやっぱり憧れだ。
でも結婚だけが幸せかというとそうでもない。
結婚しなくても幸せは得られるといまは思う。
早く結婚せえとは親にもまわりにもいわれるけれども
いまは本当にそう思う。
奇しくも私のまわりは結婚していないひとたちのほうが多いのだが
彼ら彼女らが不幸だとか別の幸せがあるよとか
私はちっとも思わない。
もちろんもしかしたら。またあと何年かしたら
すごく結婚について焦るときがくるかもしれない。
そのときはそのときでまた。こたえを見つけたらいいのだろう。
そしてそのときは恋人に式場を選んでもらうなんてことはせず
私がきちんと!式場を選ぼう。
今日もいい天気。