どうしたん?歯がいたいん?
という声でめがさめた。

なんやびくっとしとったで。
恋人はそういって心配そうに顔をのぞきこみ
私の手をぎゅっとにぎってまた眠る。

夜。なんどか目がさめたけれども
いつでもつながれている手にあんしんをしながらまた眠る。

怖い夢をみないように
痛いおもいをしないように
そんなふうにつながれた手。恋人の手。

なんどめかに目がさめて
つながれた手がゆるくほどけているなと思ったら
気配で目をあけた恋人がぼんやりと
またぎゅうっと手をつなぐ。

私がいつも思うのは
私がつらい気持ちでいるときに
恋人が示す態度。ふるまい。気持ち。
そういうことの本質的なあたたかさだ。

恋人のそういうところは
いつだって私のこころの
いちばん奥をあたためて
いちばん手前をよりやわらかくして

ああだから
このひとと一緒にいるんだな。

もうすぐ一緒に住んでいちねんたつね。
そうやなあ。

そんなふうにいいながら
街を歩く。ずいぶんと住みなれたこの街。

いちねんがずうっとになるといい。
そんなふうに思うけれども
いちねんはいちにちの積み重ねでしかなく
だから私は今日もまた
恋人とすごせたことをうれしく思う。