甲子園球場がリニューアルされたそうだ。

そうだ、といっても
甲子園には行ったことがない。

高校野球は好きだしプロ野球も嫌いじゃない。
でも実際に甲子園まで足を運んだことがないので
あの蔦がからまる外観とか、は、この目で見たことがない。

そういえば大学のとき
高校野球が好きな有志があつまって
各駅停車を乗り継いで夏の甲子園を見に行く、という企画が毎年おこなわれていた。

サークルの部室には参加者募集の手書きのポスターが夏になると毎年張り出される。
それはもう甲子園とわかちがたいものであるかのように。

私はアルバイトが忙しくて(なにしろ生活費を稼がないといけなかったからバイトは一年中休めない)、
お金も日数もそれなりにかかりそうなその企画に乗ったことはなくて、
でもいつだってうらやましいなと思いながらその手書きのポスターを横目でみる。

いま思えばたかだか数日のあいだくらい
アルバイトを休んだってよかったのだ。
それよりも鈍行で甲子園まで行くという
学生しかできないようなばかばかしいことをするほうが
どれほどか価値があったといまだからわかる。
でも当時の私にはそういうことは思い至らなかったのだ。

話がそれてしまった。

リニューアルをされた甲子園球場を視察した巨人軍のオーナーが
巨人軍にも自前の球場がほしいと語ったあとで、
こんなことを言ったそうだ。

「屋根のない球場はいいなあ。東京ドームの屋根を取り外してもらいたい。野球は青空のもとでやるのが一番。」

とてもよくわかるなあと思う。

天候に左右されないほうがいいと思う向きもあるだろうが
すっかりと晴れた青空の下で。
夕焼けに染まりながら。
夏の暑い空に包まれながら。
夕立に打たれて。

私はそんな、空のしたで、
野球を、野球だけでなくスポーツを、見るのが好きだ。

いまではほとんど行かないけれども
大学のときはアルバイトと授業のあいまのぽっかりとした時間に
晴れていれば神宮球場の外野席に行った。
数人の仲間と夜の球場に行ってひいきの球団を応援したこともあるし
会社に入ってからも友だちや会社のひとたちにつれられて
それなりにいろいろな球場に行った。
野球にもサッカーにも行った。
幕張にも柏にも鹿島にも神宮にも水道橋にも静岡にも横浜にも名古屋にも行った。

それでやっぱりいいなと思うのは
千葉のマリンスタジアムや横浜の市営球場のように
球場に近づいていくときに、空から歓声が降ってくるような
あの開かれた空間のたのしさだ。

閉じられた空間にはそれがない。
空調はいつだって万全だし夕立がきたってへいちゃらだけれども
カキンと打たれたボールの先が空に吸い込まれそうになる
あのきらきらとした瞬間を見るほうが私は好きだ。
そんなふうに思う。