ちょっと前の話になるが、
女性専用車両というものに、初めて乗ってみた。

私はジェンダーの女性性万歳的な発想がどうしてもなじめなくて、
だから女性専用車両とか、女性のための権利とかそういうのが苦手だ。

オトコはオトコらしくあっていいし
オンナはオンナらしくあっていいと思う。
そのまえに、ひととしてよきひとでありさえすれば。

では「らしく」ってなに?と思うひともいるだろう。
それは私にだってちゃんとはわからない。

ただなんにせよ私は極端なことが苦手で、
たとえば過剰な禁煙ブームとか他人バッシングとかの風潮も全然好もしくない。
だいたいみんなが少しずつ、相手に対する思いというか、を持てば、
極端に区分けしたりすることって必要ないと思うんだけれど。

そんなわけで、女性専用車両というのも、
それをつくるなら男性専用車両もつくりたまえ!くらいに思っていたわけで、
さらにあえて女性専用車両に乗らない、とも思っていたわけなのだが。

先日、たまたま朝早く電車に乗って出かける用事があって、
しかも乗り換えの関係で先頭の車両に乗るほうが便利、という状態だったので、
では一度、女性専用車両、に乗ってみようと思ったのだった。

時は通勤ラッシュピークの中央線である。
他の車両は、ガラス窓に顔がぺたりとくっついて髪型も人相も変わっているひとがたくさんいるのだが、
女性専用車両のまあ優雅なことときたら!

もちろん私が乗る駅からは座ることはできないものの、
ちょっと混雑してるかな?という程度で、
次のターミナル駅では座ることすらできてしまったのである。
隣の車両は相変わらずぎゅうぎゅうなのにね。

うーん、快適。である。

これはやっぱり、男性専用車両もつくってあげたほうがいいのではないだろうか。
もちろん車両における男性比率のほうが高いから、男性専用をつくったって大勢に寄与しないとは思うんだけれども。
それでも女性が一人も乗っていない車両というのはないわけで。

だいたいおそらく女性専用車両というのは、痴漢行為をする男性を避けるために
つくられたのではないかと思うのだが(違っていたらすみません)、
混み合う電車で婦女子のお尻などに誤って手があたってしまい、
ヒールで踏みつけたれたり、ぎろりとにらまれたりしたことがある殿方も
ひとりやふたりではあるまい。

実は私は痴漢に遭った経験というのがかなり多くて(世の中標準は分からないからみんなと同じくらいかも知れないけど)、
特に田舎から出てきたばかりのまだ10代のときに初めて体験した痴漢というのは、
いまでも忘れられないくらいに屈辱的、というより恐怖体験だった。
あまりにも怖くて、同じ時間帯の快速や急行電車に乗れなくなって、しばらく遠い道のりを各駅停車で学校に通ったことすらあるくらいだ。
別にミニスカートとか、胸が露になるような服を着ていたわけでもなんでもなく、
たとえジーンズにブラウスだって、痴漢というヤツはやってくるのである。
どうしてこんな目に?とものすごく傷つくし、悔しくて泣けてくる。

それでもやはり思うのは、
痴漢を経験した女子も、痴漢と間違われた男子も、
おそらく同じくらい傷つくのではないかということだ。
ましてや痴漢の冤罪に問われてしまったら、悲劇中の悲劇に違いない。

ただ、いまの男性には、通勤ピークに絶対に痴漢と間違われないようにするためには、
電車に乗らないという方法しかない。
女性には女性専用車両に乗るという手段があるのにね。
こういうバランスの悪さって、私はやっぱり好きになれないんだよなあ。と。
快適な女性専用車両に揺られながら思うのだった。