恋人の会社にインターンシップに来ている子で、
Nくんという男の子がいる。
この春に就職する若い男の子なのだが、ちょっと昔気質というか、
アツくて人情に弱いタイプの男の子だ。

彼と家族の話をしていたときのこと。
ボク、両親が共稼ぎのせいもあってすっごいおばあちゃんっ子なんですけどね、
いまでも申し訳ないなと思っていることがあるんです。

聞いてくれますか?といって彼が話しはじめたのは、こんな話だった。

Nくんがまだ小学生のときのこと。
学校の行事で数泊の旅行にいくことになった。

当時Nくんは少年ジャンプに掲載されているある連載をとても楽しみにしていて、
毎号ジャンプを買っていたのだけれども、
その数泊の旅行のあいだに、おそらくジャンプは売切れてしまう。

そこでおばあちゃんに、
「ジャンプを買っておいてね」とお願いをして、旅行に出かけた。

数日後、家に戻って「ばあちゃんジャンプは?」といのいちばんに聞くと、
おばあちゃんはダンボール箱を抱えて戻ってきた。

なんだこれ?とNくんが中をのぞくと、
少年ジャンプ、ヤングジャンプ、なんとかジャンプ・・・と、ジャンプと名前がつくありとあらゆる雑誌が入っていた…。

オレにとってはジャンプといえば少年ジャンプしかないけれど、
ばあちゃんにしてみたらよくわからなくて、それは当然で、
でもそのときはばあちゃん何してるんだよ!って思ったけれど、
いま思えばそれってばあちゃんの、孫に対する愛なんだなってすごいわかるんすよね。

と、Nくんはいっていて。
そうなんだよなあと私も思う。

きっと本屋さんに行ったおばあちゃんは、どれが孫が楽しみにしている雑誌かわからずに、
とても困ってしまったのだろう。
お店のひとに聞くなりしておそらくはこれだとわかってはいても、
それでも万が一のために、全部の雑誌を買わないと気がすまなかったその思い。

そんなおばあちゃんの気持ちや行動が、
ほんとうにとてもよくわかるのだ。

いいおばあちゃんだね、とNくんに言ったら、そうなんですよ、いいばあちゃんなんですよ、と
はきはきとこたえていて、なんだかいいなととても思った。

そんなNくんは、いまでも毎年おばあちゃんからバレンタイン・デイのチョコレートをもらっているそうだ。
なんでか毎年2月13日にくれるから、ばあちゃんが毎年最初にくれるヒトなんですよね。
と笑っている。
Nくんは高校のときなどはそれこそ毎年10数個もチョコレートをもらっていたという人気モノである。

おばあちゃんの「毎年最初」、
果たして勘違いしてなのか計算ずくなのか。
それは私にはわからない。