挽歌。

元気ですか。
私は変わらず元気で
もうすぐまたひとつ、歳をとります。

Sがいなくなってから
どれくらい経つのかな。
毎年かぞえていたけれど
だんだんメンドウになってきちゃったよ。
わかるかな？だってSの不在をかぞえることに
いったいどれくらい意味があるんだろう。

ときどきSの夢を見ます。
元気だったころ。一緒に暮らしていたころ。好きだったころ。
おたがいに好きだったころ。

死んでしまったSの夢も見ます。
でもどこかそれはつくりものめいていて
映画とかテレビで見たり本で読んであたまのなかでつくりだした
幻をあてはめているようで
それでも目がさめるとかなしい。

いましあわせだけど
それとべつにやっぱりSがいないのはかなしいなって
そういうふうに思う。

もしあのとき引き留めていたら
あなたは南の島に行ったりしなかったのかな。
もう自分のいえに帰ったほうがいいなんていわなかったら
あなたは私のそばにずっといたのかな。
そうしたらあなたの代わりに死んだのは私だったのかな。
それともやっぱりあなたは死んでしまうのが運命で
なすすべもなくみとどけることしか私はできなかったのかな。

そんなことをいったい何度考えただろう。

きりがない。意味がない。ひとりよがりの自問自答。

天国があるのなら。
そこにいてほしいなと思う。
ねえ本当だよ。いつかまた会えたらいいなと思う。
そうしたら私は、あなたを追い出したりなんかしない。
ごめんね。いちねんに一度くらいあなたのために泣いてもいいよね。