それにしても、ふと、って。ひとりでって。

オトウサンはいないの?ひとりで来たの?
と聞いたら、

お父さんは、油は好きだけど日本画好きじゃないでしょー。
誘ったんだけど、オレはいいやーっていうから置いてきちゃった。
それでね、それでね、と話し続ける。

確かに父は自分で描いているせいもあって、洋画、それも油絵が好きで、日本画は好きではないしなあ。
しかし昨晩思い立ってって・・・なんて急激なんでしょう。
思い立ったら吉日というのはものすごく母らしいところなんだけど。

霞ヶ関にいる母と電話で話していても埒が明かないし、
万が一母の携帯の充電が切れたら大変だ。

仕事がひと段落したらすぐに行くから、先に美術館に行っていてね、
ところで場所はわかるの?新国立は代々木じゃないよ、六本木だよ?といったら、
え?六本木の代々木?とかいっている。
危なすぎる。若いころは東京に住んでいた母だけれども、いまではまったく土地勘がない。

目の前に日比谷線があるというので、とにかくそれで六本木まで乗るように、
そこからこれこれの出口を出て、歩いて5分で美術館に着くから、展覧会で合流しよう、ということに相成った。

とりあえず1時間かかる仕事を15分で仕上げ、
準備をして、会社に行く恋人と一緒に電車に乗った。
お母さんが来てるっていうんだよねー急に。といったら、母の性癖を理解している恋人は爆笑していた。