会社のひとが亡くなった。
会社のひとといっても直接は知らない。
仲のいい先輩が仲良しだったひとで、亡くなっちゃったんだよね、と先輩から教わった。

乳がんで。亡くなる直前まで、職場にいたこと。
最後まで働きたいというのが、彼女の希望だったこと。
会社も、職場のひとたちも、その気持ちを知って、すべてを受け容れていたこと。

そんなことを、先輩から聞いた。

オレにはとてもそんな生き方はできないねーと
先輩は乱暴な口調で、でもとてもかなしそうにいう。

ナオも気をつけなよ、カラダがいちばん大事なんだから。
そう付け加えるのを忘れずに。

私にもそんな生き方はできない。

亡くなった彼女ではないから、どういう気持ちだったのかも
どういう状況なのかもわからないけれど。

きっと仕事がとても好きで。
会社。役割。仕事仲間。仕事そのもの。
なにかが、あるいはぜんぶが好きで、誇りと、なによりも責任を持って
仕事をしていたひとなんだろう。

私は元気だったころから
そこまで仕事を好きではなかったし
(といっても往時の私を知っているひとは信じてくれないのだが)
それに加えて、いまは仕事よりも仕事以外のことをたいせつにしたいと
はっきりとわかっているから、
だから余計にわからないなと思った。

わからないけれども。
ひとつの生き方として、死に方として、すごいなと思う。

同じような死に方をしたひとのことが
頭をよぎる。
自分の場所であるレストランにずっと立ちつづけたひと。

たぶん、彼女にとって、そうして彼にとって。
仕事をする場所が、
いっとう好きな場所だったんだろう。
なによりも大切な場所だったんだろう。

だけれども。
私は職場では死にたくないなと思った。
もちろん彼女も彼も、
最後の最後に職場で倒れたわけではないのだろうけれども。
(たぶん。それは知らないだけだ)

ただ私が元気でいる最後の場所は、職場にしたくないと
すごく思った。