ねこがいない。
駅から家に帰る途中の坂道にとてもだらしのないねこがいて、そのねこをかまって家に帰るのがとても楽しみだった。
だらしのない、というかなんというか。
そのねこは、なぜかいつも道路のまんなかで、くたりと、ほっぺたもしっぽもぜんぶつけて横になっている。
ひとがとおっても気にいないし、気が向けば首をもちあげたりしっぽをぱたぱたとしたり、にゃんとないてみたりする。
その傍若無人というかひとなれ具合がなんともかわいらしくて、
近所のひとたちはみなそのねこに声をかけたりなでたりさすったりしていた。
野良なのかかいねこなのかわからない。
けれどもたぶんかいねこなんだろう。あまりにも甘え上手だったから。
あまりに暑い夏が続いていて、気がついたらねこがいなくなった。
これまでも毎日いたわけではなく、それでも数日にいちどは必ずお目見えしていたのに。
何日も何日もねこがいなくて、暑いから家に入っているのかなと恋人と話をしながらその道を歩いた。
ねこがたいてい寝そべっていた、夜の散歩の時間。
最後にみたのは1ヶ月ほどまえだ。
それまで2ヶ月ほど見ていなくて、急にみたねこは、やっぱりくたりと道ばたによこになっていて、
そうしていつもみたいに甘え上手だった。
でも目と皮膚の病気になったみたいで、顔のまわりの毛がだいぶ抜けてしまっている。
やつれていて元気がない。
それでも久しぶりにねこにあえたのはうれしくて、
わあねこちゃんひさしぶりだね、と声をかけた。
私たちの前後をあるいているひとたちも、残らずひさしぶりだとかねこ今日はいるねとかいっていたので、
やっぱりみんな気にしていたのだろう。
またいなくなってからもう1ヶ月はゆうにたつ。
どうしたんだろう。
ねこまたいないね。
と道を通るたびに恋人にいう。
病院いっているんちゃう、目の。
と恋人はたいていそうこたえる。
私はそういう恋人がとてもすきだ。
そういう前向きで楽観的なところ。
どうぶつのことをよくしらないあっけらかんさ。
それでも、そうか病院にいっているのか。
私はそう思うだけでとても安心する。
よからぬことをすぐに考えてしまう私の気持ちは、それでとても救われる。
今夜は恋人は遅いから、
私はひとりで坂道をくだる。
そうして今夜もねこがいなくて、いつもよりもっと淋しい。
駅から家に帰る途中の坂道にとてもだらしのないねこがいて、そのねこをかまって家に帰るのがとても楽しみだった。
だらしのない、というかなんというか。
そのねこは、なぜかいつも道路のまんなかで、くたりと、ほっぺたもしっぽもぜんぶつけて横になっている。
ひとがとおっても気にいないし、気が向けば首をもちあげたりしっぽをぱたぱたとしたり、にゃんとないてみたりする。
その傍若無人というかひとなれ具合がなんともかわいらしくて、
近所のひとたちはみなそのねこに声をかけたりなでたりさすったりしていた。
野良なのかかいねこなのかわからない。
けれどもたぶんかいねこなんだろう。あまりにも甘え上手だったから。
あまりに暑い夏が続いていて、気がついたらねこがいなくなった。
これまでも毎日いたわけではなく、それでも数日にいちどは必ずお目見えしていたのに。
何日も何日もねこがいなくて、暑いから家に入っているのかなと恋人と話をしながらその道を歩いた。
ねこがたいてい寝そべっていた、夜の散歩の時間。
最後にみたのは1ヶ月ほどまえだ。
それまで2ヶ月ほど見ていなくて、急にみたねこは、やっぱりくたりと道ばたによこになっていて、
そうしていつもみたいに甘え上手だった。
でも目と皮膚の病気になったみたいで、顔のまわりの毛がだいぶ抜けてしまっている。
やつれていて元気がない。
それでも久しぶりにねこにあえたのはうれしくて、
わあねこちゃんひさしぶりだね、と声をかけた。
私たちの前後をあるいているひとたちも、残らずひさしぶりだとかねこ今日はいるねとかいっていたので、
やっぱりみんな気にしていたのだろう。
またいなくなってからもう1ヶ月はゆうにたつ。
どうしたんだろう。
ねこまたいないね。
と道を通るたびに恋人にいう。
病院いっているんちゃう、目の。
と恋人はたいていそうこたえる。
私はそういう恋人がとてもすきだ。
そういう前向きで楽観的なところ。
どうぶつのことをよくしらないあっけらかんさ。
それでも、そうか病院にいっているのか。
私はそう思うだけでとても安心する。
よからぬことをすぐに考えてしまう私の気持ちは、それでとても救われる。
今夜は恋人は遅いから、
私はひとりで坂道をくだる。
そうして今夜もねこがいなくて、いつもよりもっと淋しい。