美容室で、アシスタントの男の子と「やっぱり猫が好き」の話題になった。
同世代のひとは知っているひとも多いだろう。確か20年くらい前に放送していた、どこにでもいそうでどこにもいるわけがない三姉妹のシチュエイションコメディのようなドラマである。
なにしろもたいまさこと室井滋と小林聡美が三姉妹なのだ。おまけに脚本は三谷幸喜。
細部は覚えていないのだが、とてもおもしろかったという記憶がある。
妙な間合いでぷっと笑ってしまう、というような。
夜遅い時間に、「やっぱり猫が好き」を見るためにこっそりと階下におりていくと(私の家はテレビが1台しかなかったし、おまけに勝手にテレビを見てはいけなかった)、兄が既にテレビの前に陣取っているか、あるいは私が見始めていると兄がうえから降りてきた。
そうしてふたりでいつも「やっぱり猫が好き」をみた。
そのころ兄と私は中学生で、としごで、兄妹というちょっと微妙なバランスのなかで、
毎日ほとんど口をきかなかったのだが、「やっぱり猫が好き」の前ではいつだって結託していた。
チャンネル争いだってしないし、耳ざとい母が起きてきそうな気配を感じると、さっとテレビの音を極小にしたりした。
ひとつひとつのストーリーは忘れてしまったけれども。
そういうことは緻密に憶えている。
テレビの向こうにある古くさいカーテン。ごろりと横になったときの畳の感触。
美容室のアシスタントの男の子は、私よりもずいぶん年下だからリアルタイムでは見ていなくて、
「かもめ食堂」がおもしろかったとお客さんにいったら、「やっぱり猫が好き」をすすめられたんだそうだ。
ああこんな話しちゃうともういっかい見たくなりますよ、今日はtsutaya寄らなきゃ、なんていっている。
私も久しぶりに見たくなってきた。
そういえばこのアシスタントの男の子は、最近はさみをもちはじめ、時折はお客さんを切っているのを見かけるようになった。
いつのまにかスタイリストに昇格したのだろう。
この美容室はアシスタントの子たちはしょっちゅう入れ替わる。
1年以上続いている子はほとんどいないなかで、その男の子だけは私が最初に行ったときからずっといる。
ひょろりと背が高くて気がいい感じの子なのだが、中学生のときは眉毛なかったっすよ、なんていう。
とてもそんなふうに見えない。
ああ結婚したいなあ。
と、その子はどういうわけか今日は数回いっているので、
まだ若いでしょ、ナニいってるのよ、と一笑に付したら、
ぜんぜん若くないですよーもう27ですよーといったのでびっくりした。
27歳!
だってはじめて会ったときは、その子はハタチそこそこだったのだ。
そうして私のなかではまだその子はハタチそこそこで、だから結婚なんてなにいってるんだか、と思ったのだ。
27歳なんていったら、立派に結婚して子どもが何人かいてもおかしくない。
そうか、もうそんなに時間が経ったのだ。
目の前の時間ではない時間の流れは。
こんなふうに意識させられることが多い。
同世代のひとは知っているひとも多いだろう。確か20年くらい前に放送していた、どこにでもいそうでどこにもいるわけがない三姉妹のシチュエイションコメディのようなドラマである。
なにしろもたいまさこと室井滋と小林聡美が三姉妹なのだ。おまけに脚本は三谷幸喜。
細部は覚えていないのだが、とてもおもしろかったという記憶がある。
妙な間合いでぷっと笑ってしまう、というような。
夜遅い時間に、「やっぱり猫が好き」を見るためにこっそりと階下におりていくと(私の家はテレビが1台しかなかったし、おまけに勝手にテレビを見てはいけなかった)、兄が既にテレビの前に陣取っているか、あるいは私が見始めていると兄がうえから降りてきた。
そうしてふたりでいつも「やっぱり猫が好き」をみた。
そのころ兄と私は中学生で、としごで、兄妹というちょっと微妙なバランスのなかで、
毎日ほとんど口をきかなかったのだが、「やっぱり猫が好き」の前ではいつだって結託していた。
チャンネル争いだってしないし、耳ざとい母が起きてきそうな気配を感じると、さっとテレビの音を極小にしたりした。
ひとつひとつのストーリーは忘れてしまったけれども。
そういうことは緻密に憶えている。
テレビの向こうにある古くさいカーテン。ごろりと横になったときの畳の感触。
美容室のアシスタントの男の子は、私よりもずいぶん年下だからリアルタイムでは見ていなくて、
「かもめ食堂」がおもしろかったとお客さんにいったら、「やっぱり猫が好き」をすすめられたんだそうだ。
ああこんな話しちゃうともういっかい見たくなりますよ、今日はtsutaya寄らなきゃ、なんていっている。
私も久しぶりに見たくなってきた。
そういえばこのアシスタントの男の子は、最近はさみをもちはじめ、時折はお客さんを切っているのを見かけるようになった。
いつのまにかスタイリストに昇格したのだろう。
この美容室はアシスタントの子たちはしょっちゅう入れ替わる。
1年以上続いている子はほとんどいないなかで、その男の子だけは私が最初に行ったときからずっといる。
ひょろりと背が高くて気がいい感じの子なのだが、中学生のときは眉毛なかったっすよ、なんていう。
とてもそんなふうに見えない。
ああ結婚したいなあ。
と、その子はどういうわけか今日は数回いっているので、
まだ若いでしょ、ナニいってるのよ、と一笑に付したら、
ぜんぜん若くないですよーもう27ですよーといったのでびっくりした。
27歳!
だってはじめて会ったときは、その子はハタチそこそこだったのだ。
そうして私のなかではまだその子はハタチそこそこで、だから結婚なんてなにいってるんだか、と思ったのだ。
27歳なんていったら、立派に結婚して子どもが何人かいてもおかしくない。
そうか、もうそんなに時間が経ったのだ。
目の前の時間ではない時間の流れは。
こんなふうに意識させられることが多い。