一気に夏っぽい毎日。
暑いけど、こういう感じはとても好き。
青い空の下でじりじりとする感じ。

恋人はいつも朝6時くらいに起きて、1時間くらい仕事をしてからまた仮眠をするのだが、
今日は仮眠がうまくできなかったらしい。
7時半くらいに、喫茶店にいかへん?と仕事部屋から起こしにくる。
喫茶店で食べる朝ごはんが大好きな、私のツボを絶妙について。

顔を洗って、髪をささっと整えて、日焼け止めを塗っただけで外に出る。
まだ早いのに、既に今日は暑くなると一発でわかるような空気、空の色。

家から駅に向かっててくてくと歩きながら、
その既に気だるい、しかし熱気がある気配に、
なんだかタイとかマレーシアに旅行にいっているときの朝って感じがするね。
と恋人といいながら歩く。

なにを思い出したのだろうか、
そういえば長崎行ったなあ。と恋人が突然という。
長崎。一昨年だったかに、恋人と旅に出た街だ。

ふたりとも旅が好きなので、なんのかのと年に何度か私たちは旅をする。
でも今年は無理だろうなと思っていて、残念だとはもちろん思うけれども、そういう状況も恋人も受け容れて、支えると決めているから気にしない。

ただ。
そういえばまた旅行にいきたいね、落ち着いてきたころにでも。
とぽつりといったら、そうやな落ち着いたらどこか行こうか、どこがええかなあと恋人がいう。

私はすっかりとうれしくなって、
市場があるところがいいな沖縄とか
それか北海道とか福岡とかとわくわくしながらいっていたら、
うーんなんかおもろいところないのんかなあと恋人はいって、
そうや韓国とかええんちゃう?と、ものすごい妙案だというふうに付け加えた。

韓国。
いつか恋人と行ってみたいと思っていた国だ。
恋人の親戚はまだ韓国に住んでいるし、恋人自身はもちろん何度も韓国に行っている。
いつか連れて行ってねと付き合い始めたばかりの頃にいったら、軽く聞き流された。
あれはわざと聞き流したんだろう。いま思えば。
なぜならば恋人は自分のルーツをとても大切にしているから。
そのときの気持ちを、いまはだから前よりもわかるようになった。

だからふたりで行く旅の候補地に、
韓国を挙げたことはそれ以来一度もない。
そうして一方で恋人は、在日韓国人の友達とは韓国に行ったし、
私は友達から誘われても韓国にだけは行かなかった。
一人旅はいわずもがな。

あれから随分経って。
やっと。恋人から韓国に行こうといってくれた。
そのことにたぶんおおきな意味も深い意味もなくて
ただ単に、私が行きたい市場があって、恋人が好きな活気溢れた街がある、
そんなところのひとつとして挙げただけのことだ。
朝のさんぽの、今朝の旅先の朝の散歩のような雰囲気に
かぶれてしまっただけのことだ。

でもそれでも嬉しかった。

ほんとうに行けるのは
きっとまだ先だろうけれど。
それでもいつか韓国の街並みを恋人とさんぽしながら
今朝のことを思い出すだろう。いつか。