御茶ノ水にある「純喫茶ミロ」というところに行った。
御茶ノ水というのはどういわけか喫茶店過疎地帯で、ファストフードやチェーンの定食屋は山のようにあるのだが、
ゆっくりくつろげるようなお店はてんでない。
それで目に付いた「純喫茶ミロ」に入ったというわけだ。
だいたい純喫茶ってなんなんだろう。
純喫茶と銘打っているお店に共通しているのは、布張りの椅子とソファにかけられた白いクロス。
たいていはクラシック音楽が流れていて、薄暗く黴臭いにおいが少しする。そんな感じ。
ちなみに純喫茶、というのは、昭和30年~50年くらいに隆盛をほこった喫茶店の種類、で、アルコールとホステスを供給する「喫茶」「カフェー」に対向して、珈琲や紅茶のみを出す「本来の」喫茶店、という意味なんだそうな。
狭い路地の中ほどにある「純喫茶ミロ」も、絵に描いたような「純喫茶」で、
布張りの椅子にはきちんと白いクロスがかけられていたし、フィリッパ・ジョルダーノとはいえクラシックに分類されるであろう音楽がかかっていた。
そうしてやはり薄暗くて、すえたようなにおいがする。
お客は仕事途中のおじさんたちか、年配のご婦人といった何組かのひとたち。
開店当初から勤めていると思われる(というよりは店の主なのだろう)、相当高齢の女性と、その方とどうも血縁関係にありそうなやはり高齢の女性と、アルバイトと思われる女の子の3人がお店のひと、だ。
私がお店に入ったとき、なぜか最高齢の女性と若い方の女性が大声でけんかをしていて、アルバイトの子は、でもおびえるでもおどろくでもなく、ふつうにしていた。
何人かいる客人も、みなふつうに談笑したり新聞を読んだりしている。
もしかしたらいつもの儀式、なのかもしれない。
お客にしたらたまったものではないが、しかしそういえば、田舎の母と母の母は、まだあたまがしっかりとしているときはよく大声で喧嘩をしていたなあということを思い出したりして、たまったものではないという気持ちはそのうち消えて、なんだか懐かしいものを見るような不思議な気持ちになるのだった。
とりあえず頼んだチーズトーストは、これまで食べたどの店のチーズトーストよりも大きいもので、なんと厚めに切った2枚のトーストにチーズがたっぷりとかかっていて、さらにはひとくち大に切られたチェダーチーズが数枚、皿に盛られていた。
いくらチーズ好きとはいえ、こんなには食べられまい。
その間も、アルバイトの女の子はいちいち行動を指図してくる(らしい)高齢のご婦人に「ハイ、ハイ」と返事だけは繰り返し、高齢のご婦人二人はなにか大きな声で言い合ったかと思えば、笑いあったりしている。
居心地がいいのか悪いのかよくわからない。
ただこの感じ、これと近い感じを昔どこかで見たような。
そんな気がしてくる、なんとも不思議な店なのだった。
御茶ノ水というのはどういわけか喫茶店過疎地帯で、ファストフードやチェーンの定食屋は山のようにあるのだが、
ゆっくりくつろげるようなお店はてんでない。
それで目に付いた「純喫茶ミロ」に入ったというわけだ。
だいたい純喫茶ってなんなんだろう。
純喫茶と銘打っているお店に共通しているのは、布張りの椅子とソファにかけられた白いクロス。
たいていはクラシック音楽が流れていて、薄暗く黴臭いにおいが少しする。そんな感じ。
ちなみに純喫茶、というのは、昭和30年~50年くらいに隆盛をほこった喫茶店の種類、で、アルコールとホステスを供給する「喫茶」「カフェー」に対向して、珈琲や紅茶のみを出す「本来の」喫茶店、という意味なんだそうな。
狭い路地の中ほどにある「純喫茶ミロ」も、絵に描いたような「純喫茶」で、
布張りの椅子にはきちんと白いクロスがかけられていたし、フィリッパ・ジョルダーノとはいえクラシックに分類されるであろう音楽がかかっていた。
そうしてやはり薄暗くて、すえたようなにおいがする。
お客は仕事途中のおじさんたちか、年配のご婦人といった何組かのひとたち。
開店当初から勤めていると思われる(というよりは店の主なのだろう)、相当高齢の女性と、その方とどうも血縁関係にありそうなやはり高齢の女性と、アルバイトと思われる女の子の3人がお店のひと、だ。
私がお店に入ったとき、なぜか最高齢の女性と若い方の女性が大声でけんかをしていて、アルバイトの子は、でもおびえるでもおどろくでもなく、ふつうにしていた。
何人かいる客人も、みなふつうに談笑したり新聞を読んだりしている。
もしかしたらいつもの儀式、なのかもしれない。
お客にしたらたまったものではないが、しかしそういえば、田舎の母と母の母は、まだあたまがしっかりとしているときはよく大声で喧嘩をしていたなあということを思い出したりして、たまったものではないという気持ちはそのうち消えて、なんだか懐かしいものを見るような不思議な気持ちになるのだった。
とりあえず頼んだチーズトーストは、これまで食べたどの店のチーズトーストよりも大きいもので、なんと厚めに切った2枚のトーストにチーズがたっぷりとかかっていて、さらにはひとくち大に切られたチェダーチーズが数枚、皿に盛られていた。
いくらチーズ好きとはいえ、こんなには食べられまい。
その間も、アルバイトの女の子はいちいち行動を指図してくる(らしい)高齢のご婦人に「ハイ、ハイ」と返事だけは繰り返し、高齢のご婦人二人はなにか大きな声で言い合ったかと思えば、笑いあったりしている。
居心地がいいのか悪いのかよくわからない。
ただこの感じ、これと近い感じを昔どこかで見たような。
そんな気がしてくる、なんとも不思議な店なのだった。