江國香織さんの「雨はコーラがのめない」を読んだ。
雨というのは、
江國さんのアメリカン・コッカースパニエルのなまえ。
雨は犬だけれども音楽を聴く。
江國さんも音楽を聴く。
しばしばふたりは一緒に音楽を聴いて時間をすごす。
そのときの話だ。

本を読むことのよさというのは、
知らないことを知ることができるということにもあると思う。
知らない食べ物。知らない景色。知らない生活。そして、知らない音楽。

私も音楽を聴く。
けれどたいがいのおとながそうであるように、昔のほうがもっとずっと音楽に対して貪欲だった。
そしてたぶん、すべてのものに対して。

いまはなにが好きでなにが嫌いか
だいたい自分のことを知っているので
そういう意味で全然貪欲ではなくなった。
自分にとってここちいいなにか。その延長。

江國さんの「雨はコーラがのめない」には、たくさんの具体的な音楽が出てきて、
スウィング・アウト・シスターとかスティングとか尾崎紀世彦とかシンプリー・レッドとかビリー・ジョエルとかリサ・ローブとか、よく知っていて好きなのもあるし、知っているけれど嫌いなのもある。
もちろん知らないものもあった。
それにたとえばビートルズの話のなかにIN MY LIFEが出てくるのだけれども、
私はIF I FELLが大好きなんだよなあそういえばとか思ったりもした。
(なんとなく全体のスペルが似ているので思い出したのだが)

メリー・コクラン。アイルランドの女性歌手で、ビリー・ホリデーのカヴァーアルバムがあること。
メリー・コクランはまったく知らない名前だし、でもビリー・ホリデーのカヴァーなら聴いてみたいと思う。
それからuncertain pleasuresというアルバムも。

ウテ・レンパという女性歌手もそうだ。
江國さんのことばを借りるならば「しっかりしていて輝かしく、嬉しく心強いもの」なんだそうだ。
こんなふうに表現をされると、聴いてみないわけにはいかない。

このふたりについては、是非とも聴いてみようと思うのだ。
新しい音楽。

今夜はリサ・ローブをたくさん聴いた。
ほんとうに久しぶりにアルバムを出してきて。
そうして久しぶりのリサ・ローブは、いつ聴いてもきっぱりとした声で好感が持てる。
そうして昔きいていたときにはわからなかったことも、すこしだけわかったりもする。
すこしだけ。あるいははっきりと。

そんなふうなことがあるのもまた。
本のすばらしいところだと思う。