さて。私の手術は午後の予定(たぶん13時くらい)と聞いていたのだけれども、
担当看護師さんによると、14時くらいになるらしい。

今日のために長野の田舎から両親が上京してくるので、それならば少し遅い電車に変えたほうがよかろう、と思い電話すると、
「ナオー?おかあさんいまイチゴ買ってるとこなの、大丸で」という母の声。
え、もう東京なんだ…しかも大丸…。
イチゴというのは、お土産はなにもいらないよという私と、そんなこといわずにという母の押し問答の末、ならば好きな苺が食べたい、とリクエストしたことによる。

手術、少し遅れるみたいだから、おひるごはん食べておいでよ?といったら、
それならばふたりで、私と末弟の会社を先に見に行ってから病院にいく、という。
(大丸のある東京駅と、聖路加と、会社の最寄の新橋はとても近い距離にある)

私の両親は昔から、子どもたちの住まいと職場、あるいは学生のときは学校、を見るのを趣味にしている(さすがに職場の中に潜入することまではしないのだけれども)。
これってフツウなのかしら?
家はともかく職場を見にくるというのはどうなんだろう…といつも思うのだが、もうその争いを10年もしているとさすがに飽きてきて、なのでいまは素直に場所を教えてあげることにしている。

それに今回は、末弟も私がいる会社に入社したので、余計に喜び勇んで職場を見たい見たいといっているのである。
その気持ちはわからんでもない。

じゃあ、新橋に着いたら電話して?場所教えてあげるから。といったら、
お父さんがもう、会社に電話して場所きいたから大丈夫。とのたまうではないか。

恐ろしい両親である。
おそらく、娘と息子がそちらで働いているんですけどね、とかいって教えてもらったに違いない。
名前を出していないことだけを祈ろう(でも無駄だろう)と思いながら電話を切る。

そばで聞いていた恋人に、
親ってフツウ、子どもの会社とか見たいもの?ときいたら、
うーんどうなんやろ、でもまあいいんちゃう?なんていっている。

しばらく病室で点滴をされつつ待機する。
病院というのはどうにもこう、眠くなる場所である。
ノートパソコンを持参した恋人が隣で仕事をする傍ら、うとうととしていると。

担当看護士さんがやってきて、手術の時間がすっごく早くなりました。
と申し訳なさそうにおっしゃるではないか。
14時の予定が、なんと11時45分から。
そのとき、既に11時20分である。

私の手術に立ち会うことを大命題にして上京してきた両親に、
とにもかくにも電話をすると、ふたりは「いまナオたちの会社に着いたとこー」である。
カクカクシカジカ、と伝えると、いまから病院に向かっても間に合わないだろうから、とりあえず会社を見学したあとに病院に向かう、ということにあいなった。

父:じゃあナオ、がんばってなー
母:ナオーナオー(電話のうしろでわいわいいっている声)

と電話は切れた。