泣いているひとを見た。
お昼前の山手線のなかで。
その女の子はずっと目にいっぱいの涙をうかべて、電車に揺られていた。
まだ若い。たぶんハタチそこそこだろう。
小さくまとめた髪をあたまの上にちょこんと乗っけて、グレーやしぼりの服やストールを上手に重ねた、薄化粧のとてもかわいらしい女の子。
どの街にも必ずいるような。かわいらしい。
ただ他の子たちと違うのは。
その子がずっと目に涙を浮かべていたことだ。
そうしてまばたきをするたびに涙のたまがぽろぽろと膝におちる。
ほかのものはなんにも目に入らない目。
小刻みにふるえるちいさな肩。
私はななめ向かいの席にすわり。
その子の涙をみていた。
ひざのうえに落ちる、きらきらとひかる涙。
そういう涙には。私にもこころあたりがある。
そこが電車だとか。ひとが見ているとか。
そういうことはぜんぶ忘れてしまうような涙。
ハンカチを貸してあげたほうがいいのかな。
あるいはポケットティッシュをあげようか。
とも思ったけれどやめておいた。
とても必死で。純粋で。かけがえのない。
私はあなたの涙の理由を。たぶんよく知っている。
泣きたいときは泣いたらいい。そう思う。
家に帰ってひとりになったら。
きっともっと泣いてしまうだろう。ごはんだって喉をとおらないかもしれない。
それでもいつか。きっと涙は乾くだろう。
そうしてそんな涙を流せたことを。とても大切に思うだろう。
そんな気がしたから。
渋谷でおりる彼女を。私はそうっと見送る。
お昼前の山手線のなかで。
その女の子はずっと目にいっぱいの涙をうかべて、電車に揺られていた。
まだ若い。たぶんハタチそこそこだろう。
小さくまとめた髪をあたまの上にちょこんと乗っけて、グレーやしぼりの服やストールを上手に重ねた、薄化粧のとてもかわいらしい女の子。
どの街にも必ずいるような。かわいらしい。
ただ他の子たちと違うのは。
その子がずっと目に涙を浮かべていたことだ。
そうしてまばたきをするたびに涙のたまがぽろぽろと膝におちる。
ほかのものはなんにも目に入らない目。
小刻みにふるえるちいさな肩。
私はななめ向かいの席にすわり。
その子の涙をみていた。
ひざのうえに落ちる、きらきらとひかる涙。
そういう涙には。私にもこころあたりがある。
そこが電車だとか。ひとが見ているとか。
そういうことはぜんぶ忘れてしまうような涙。
ハンカチを貸してあげたほうがいいのかな。
あるいはポケットティッシュをあげようか。
とも思ったけれどやめておいた。
とても必死で。純粋で。かけがえのない。
私はあなたの涙の理由を。たぶんよく知っている。
泣きたいときは泣いたらいい。そう思う。
家に帰ってひとりになったら。
きっともっと泣いてしまうだろう。ごはんだって喉をとおらないかもしれない。
それでもいつか。きっと涙は乾くだろう。
そうしてそんな涙を流せたことを。とても大切に思うだろう。
そんな気がしたから。
渋谷でおりる彼女を。私はそうっと見送る。