先日、後輩に連れられて魚と味噌汁がおいしいというお店に行った。

銀座のクラブ街(というのかな)のどまんなかにある「おおつき」というお店で、お客さんは殆どがお姐さんがたと旦那さんである。
腹ごしらえもかねてこの店で待ち合わせ、一献なり二献なりあげてから、同伴でご出勤する。
もしくは、お店が終わってからこの店で遅い夕ご飯を共にする。のだそうで。
21時を過ぎるとそれまで満席だったのが潮を引いたように客が掃け(銀座の出勤は遅いのだそうだ)、23時を過ぎるとまた満席になる。

コの字型のどっしりとしたカウンターの真ん中に、畳の帳場のようなものがあるという設えで、私がお邪魔したときには、既にご出勤前のきれいになったお姐さんと旦那衆でいっぱいで。
そして後輩がいうとおり、魚と味噌汁と、そしておにぎりがとびきりおいしかった。
味はもちろんいいがお値段もそれなりにいい。

さてこの店で、鰤の塩焼きを食べた。
これがまあ本当においしいものだった。

とても感激したので、週末前の最後のランチはどこぞで鰤の塩焼きを食べようと思い、
それならと「ととや」にお邪魔する。
「ととや」は魚の焼きがすばらしいし、確かこの季節は鰤を入れてくれていたはずだ。
いつもは鮭の塩焼きをいただくが、今日は鰤にしてみよう。
ということで、お客さんが引けてきた13時半過ぎに「ととや」に赴く。

ぶり。ぶり。ぶり。
頭のなかは鰤の塩焼き一色である。

しかし「ととや」に入り。席に案内されるなり、おかみさんは笑顔で言った。

「鮭の塩焼き、ですよね?」

ああ、そうなんです。いつもは確かに鮭の塩焼きなんです。
でも今日は鰤をいただきたい。

というようなことを言うのが憚れるような、
それはそれは確信的な、そしてサービス満点の晴れやかな笑顔だったので。
おとなしく鮭の塩焼きを食したのであった。
(「ととや」の鮭の塩焼きが絶品であることには変わりはないのだけれど)