日本の歌100選、というものが決まったとニュースで読んだ。
文化省などが主催していたそうなので、大規模な100選、だったようだ。

「親から子、子から孫へ~親子で歌いつごう」というのが主旨だそうで、なるほど選ばれた曲は確かに親子で口ずさめそうな曲というか、親子で口ずさむのに適しているように思える曲、が多い。
いまの若いお母さんたちが歌えるとは思えない曲も多々あるけれども。

その、いまの若いお母さんたちが歌えないであろう曲、のなかに。
とても好きな曲があった。

「埴生の宿」。
原曲はHome,sweet homeという曲で、アメリカやイギリスの民謡になっている。

この曲を最初に聴いたのは、もうずいぶんと昔。小学生のころのこと。
ある夜、テレビで「ビルマの竪琴」という映画を見ていた、その映画のなかの印象的なシーンに、この曲は使われていたのだ。

激しい戦場のある一夜。
周囲を英国軍に包囲日本兵たちが、望郷の念をこめて「埴生の宿」をうたう。
もう生きて祖国の土を踏むことはないだろう。そんな思いのこもったかなしい歌声。
するとそれを聴いた連合軍の英国人兵士たちも「Home,sweet home」をうたうのだ。
英国兵たちも、遠い戦場の地で、同じくふるさとのことを思う。
戦場に響くふたつのことば。美しく唱和する歌声。またたく星。

その歌が「埴生の宿」という邦題だと知ったのは、
少し経ってからのことに思う。
この歌を、愛国心のあらわれのようにいうむきもあるけれども。
私はこの美しいメロディを耳にするたびに、「ビルマの竪琴」のあの有名なシーンを思い出す。

どんなにかなしい世の中になったとしても。
うつくしいものやいとしいものを理解するこころ、理解したいとおもうこころはきっとある。
変えられないと思うことでも、変えることはできる。
そして絶対的なものの前には。言葉や人種や偏見や、そういった壁は存在しないのだ。

そんなことなどを。私はそのシーンを見ながら幼ごころに思い。
たくさん流れる涙を親や兄弟にみられるのが恥ずかしくて、
ずっと下を向いていた。そんな夜。

いま同じシーンを見たらどう感じるかはわからないけれども。
それでもいまでも私の根底にあるのは、そのとき抱いた思いだったりもする。

日本の歌100選に話を戻すと。
ほかにもたくさんの美しい曲が選ばれていた。
「思い出のアルバム」とか「見上げてごらん夜の星を」とか「早春賦」とか。
そういえば「仰げば尊し」もいいけれど、同じ卒業の歌としては「巣立ちの歌」のほうが個人的には好きです。
メロディが本当に美しい。
それにしても昔の歌はほんとうに歌詞がきれいですね。