去年の暮れ。
学生の頃の先輩と、中目黒にあるもつ鍋「鳥小屋」にお邪魔する。
中目黒の鳥小屋といえば、とても有名なお店である。
しかし私は名前こそを知っていたけれども、行ったことはなかったし、行こうと思ったこともない。

それというのも。
もつ鍋、というものをいまだかつて食べたことがない。
新しいものを食べるよりは知っているものを食べたい、とはこの日記でも何度も書いてきたことだ。
よって、もつ鍋はどんどん意識外に遠ざかる。
恵比寿に「蟻月」というもつ鍋屋さんがあり、そこにはいつかは行ってみたいと数年前から思ってはいるものの、結局まだ行っていない。

今回は。先輩にお店のセレクトから予約までお任せしていたので、
その夜に「鳥小屋」に行く、すなわち「もつ鍋を食べる」というのは、もはや避けて通れないことだった。

さて「鳥小屋」。
中目黒の駅を降りて、ガード下に沿った道を歩いている途中から。
ぷぅんといい香りが漂ってくる。なんともいえない、独特の香り。

がらりと引き戸を開けると、そこはもう、ひとひとひと。
みんながみんな鍋を囲み。
友だちと。恋人と。同僚と。にぎやかに今夜の食事を楽しんでいる。
店内には、昭和の歌謡曲やら高校や大学のときにカラオケで歌ったような曲が延々と流れ。
あー懐かしい。この曲タイトルなんだっけ?とかいう声や。
サビを歌う声があちこちのテーブルから聞こえてくる。
時折、あたまの上の線路を走る電車の音がする。

こういう猥雑な空間は大好きだ。

もつ鍋をひとつとあとはおつまみをいくつか頼み。
私も先輩と同席者と、懐かしい歌をくちずさみ、いくつかの思い出話とそれ以外の話をたくさんした。

このもつ鍋がまた味がいい。
煮立てたキャベツとニラの風合いが相俟り。
出汁だけでもがぶがぶ飲んでしまいたいくらいのものなのだ。
こくはあるものの存外に澄んだ味の美しい出汁は、こうしてどんどんと胃におさまっていく。
もつ鍋というものはもっとどろどろしたものかと思い込んでいたけれども、
この店が特有なのかそれとももつ鍋とはそもそもこういうものなのか。

いずれにせよ。
もつ鍋は食べず嫌いリストからきちんと除かれて。
「鳥小屋」はもう一度行きたい店リストに名を連ねるのだった。

#鳥小屋本店[中目黒]
近くにはレストランっぽい姉妹店もあるそうです。