月に何度か家の近くの大きな本屋さんへ行き、本のまとめ買いをすることにしている。
なぜなら。ここの本屋さんで本を買うと、マイレージが貯まるのだ。
濫読のせいで月々の書籍代はまったくばかにならない。だからマイレージを貯めて気休めをする。
もちろん日々の生活のなかで、違う書店でついつい見かけた本を買ってしまうことも多々あるものの、それでもいくばくかでも見返りがあるとうれしいものだ。
今日はいくつかの新刊と、あとは先日友人にすすめられた絵本を買うことにして、さてぶらぶらと絵本コーナーを物色しているうちに。
私はある絵本にすっかりと目を奪われた。
「手ぶくろを買いに」・・・新美南吉さんの童話である。
このお話は、確か小学校低学年のときの国語の教科書に載っていたのではなかったか。
私と同年代のひとは、だからきっと多くのひとが読んでいるのではないかと思う。
そうして私はこのお話と挿絵がとてもとても好きで、何度も何度も読み返したものだった。
冷たい雪でしもやけができてしまった子ぎつねに、てぶくろを飼ってあげようと思うお母さんぎつね。
お母さんは子どものきつねの片方の手を人間の手に変えて、町へ送り出す。
でも子ぎつねは、きつねの手のほうを差し出してしまう…。そんな話。
ちいさなやさしさがたくさん詰まったこのあたたかいお話を。
私はおとなになった冬の夜、あたたかい家で静かに読んでいる。
寒い冬が北方から、狐の親子の棲んでいる森へもやって来ました。
ある朝、洞穴から子供の狐が出ようとしましたが、
「あっ。」と叫んで眼を抑えながら母さん狐のところへころげて来ました。
「母ちゃん、眼に何か刺さった、ぬいて頂戴、早く早く。」
なんてなつかしい描写だろう。
私が育ったところも昔は雪国だったから。とてもよくわかるのだ。
あの眼になにかがささったような気がするくらいの、白く輝く雪の記憶。
そういえば。
「あっ。」、のところを感情をこめて朗読するのがとても上手な男の子がいた。
先生にいつも褒められていて。指されるたびに、少し得意そうに朗読をした。
「あっ。」と叫んで眼を抑えながら母さん狐のところへころげて来ました。
「母ちゃん、眼に何か刺さった、ぬいて頂戴、早く早く。」
・・・
名前も顔も忘れてしまったけれど。あの子はいまなにをしているのだろうか。
おとなになって誰かと結婚をして子どもができて。
今度は子どもにこのうつくしい童話を。読んであげたりしているのだろうか。
まだ彼は。「あっ。」を上手に朗読できるのだろうか。
少し得意そうに。そんなふうに。
なぜなら。ここの本屋さんで本を買うと、マイレージが貯まるのだ。
濫読のせいで月々の書籍代はまったくばかにならない。だからマイレージを貯めて気休めをする。
もちろん日々の生活のなかで、違う書店でついつい見かけた本を買ってしまうことも多々あるものの、それでもいくばくかでも見返りがあるとうれしいものだ。
今日はいくつかの新刊と、あとは先日友人にすすめられた絵本を買うことにして、さてぶらぶらと絵本コーナーを物色しているうちに。
私はある絵本にすっかりと目を奪われた。
「手ぶくろを買いに」・・・新美南吉さんの童話である。
このお話は、確か小学校低学年のときの国語の教科書に載っていたのではなかったか。
私と同年代のひとは、だからきっと多くのひとが読んでいるのではないかと思う。
そうして私はこのお話と挿絵がとてもとても好きで、何度も何度も読み返したものだった。
冷たい雪でしもやけができてしまった子ぎつねに、てぶくろを飼ってあげようと思うお母さんぎつね。
お母さんは子どものきつねの片方の手を人間の手に変えて、町へ送り出す。
でも子ぎつねは、きつねの手のほうを差し出してしまう…。そんな話。
ちいさなやさしさがたくさん詰まったこのあたたかいお話を。
私はおとなになった冬の夜、あたたかい家で静かに読んでいる。
寒い冬が北方から、狐の親子の棲んでいる森へもやって来ました。
ある朝、洞穴から子供の狐が出ようとしましたが、
「あっ。」と叫んで眼を抑えながら母さん狐のところへころげて来ました。
「母ちゃん、眼に何か刺さった、ぬいて頂戴、早く早く。」
なんてなつかしい描写だろう。
私が育ったところも昔は雪国だったから。とてもよくわかるのだ。
あの眼になにかがささったような気がするくらいの、白く輝く雪の記憶。
そういえば。
「あっ。」、のところを感情をこめて朗読するのがとても上手な男の子がいた。
先生にいつも褒められていて。指されるたびに、少し得意そうに朗読をした。
「あっ。」と叫んで眼を抑えながら母さん狐のところへころげて来ました。
「母ちゃん、眼に何か刺さった、ぬいて頂戴、早く早く。」
・・・
名前も顔も忘れてしまったけれど。あの子はいまなにをしているのだろうか。
おとなになって誰かと結婚をして子どもができて。
今度は子どもにこのうつくしい童話を。読んであげたりしているのだろうか。
まだ彼は。「あっ。」を上手に朗読できるのだろうか。
少し得意そうに。そんなふうに。