今日はとても寒い。
昨日までの暖かさが一気に吹っ飛んでしまって。
もう本当に寒い。

駅から家まで、足早に歩く。
マフラーにしっかりと顔をうずめて。
足早すぎて寒くなりすぎないくらいの、絶妙な慎重さで。

途中のコンビニエンスストアから、スーツを着た男のひとが出てきた。
あろうことか。そのひとは、棒のアイスクリームを食べている。
信じられない。だってこんなにも寒いのに?

私はずっとそのひとのあとを歩く。
そのひとはアイスクリームを食べながら歩く。
見ているだけで寒いのだ。でもなんだか見ずにはいられない。

寒い日にアイスクリームを食べるのは、私も案外嫌いではない。
でもそれは、あたたかい部屋でのこと。
あたたかい部屋でぽっかぽかな毛布にくるまって食べるアイスクリームのこと。

そのひとは。とても寒い風のなかをすたすたと歩いていく。
すたすた。ぱくぱく。ぱくぱく。すたすた。

もしかしたら。マイナス×マイナスでプラスになったりするのかな。
そんなふうに思ってしまうくらいに
それはそれは見事な歩き食べっぷりで。
それはそれは見事なアンマッチっぷりで。
寒い寒いと歩きながら。なんだかおかしくなってしまう。

寒い寒い冬の日に見た。
冷たいアイスクリームの話。