家に帰ったら。
アパートの入り口に、ちいさなサンタクロースの人形が立っていた。
大家さんが毎年飾る、クリスマスオーナメント。
いまの家に引っ越してきたのは4年前の12月の、確か27日だったように思う。
クリスマスを数日過ぎたその夜も、アパートの前にはサンタクロースがにっかりと笑って立っていて。
なんだか季節はずれだなあと思ったものだ。
でもそれから少しして大家さんにお目にかかったときに。
サンタクロース、気づきました?
あれはね、ナオさんが引っ越してくる日を聞いてたから、それまで飾っておこうって決めていたんだよね。
いらっしゃいませ、ということでね。季節はずれだけどね。
と爽やかに笑っておっしゃっていて。
ああなんてあたたかい気遣いができるひとなんだろう。
と私は思ったのだった。
当時私はいまと比べ物にならないくらいに絶望的な気持ちで。
おそらくとても。切羽詰まっていて。
何しろ引っ越そうと決めてから1週間足らずで家を見つけ、その数日後には引っ越していたくらいに…まるでなにか大きなおそろしいもの、あるいはひたひたと冷たくて悲しいものから逃げるように…急いていた。
いや実際に、逃げてきたのだ。
自分がとらわれしがみついていた悲しい過去から。
これ以上、下がれないと思えるくらいにどん底の自分から。
いまでもよく憶えている。
そのきりきりとした、こころの状態が。
大家さんのこまやかな心遣いによって。とてもとても救われたのだった。
そうしてこの新しい街で。家で。私は私をやり直そうと思った。4年前の冬。
あれからもう4年経つのだ。早いものだ。
あの頃に比べたら。私はとても元気だと思う。
いまでも迷ったり悩んだりしていることはたくさんあるけれど。
少なくとも、元気だ。そうしてたぶん、それが何よりなのだ。
私は。だから。
私が大家さんのサンタクロースに救われたように。
いま傷ついているひとがいたら、そっとなにかを差し出したいと思う。
差し出がましくない程度に。あるいは差し出がましいと思われても。
そんなふうに思う。
もうすぐクリスマス。
アパートの入り口に、ちいさなサンタクロースの人形が立っていた。
大家さんが毎年飾る、クリスマスオーナメント。
いまの家に引っ越してきたのは4年前の12月の、確か27日だったように思う。
クリスマスを数日過ぎたその夜も、アパートの前にはサンタクロースがにっかりと笑って立っていて。
なんだか季節はずれだなあと思ったものだ。
でもそれから少しして大家さんにお目にかかったときに。
サンタクロース、気づきました?
あれはね、ナオさんが引っ越してくる日を聞いてたから、それまで飾っておこうって決めていたんだよね。
いらっしゃいませ、ということでね。季節はずれだけどね。
と爽やかに笑っておっしゃっていて。
ああなんてあたたかい気遣いができるひとなんだろう。
と私は思ったのだった。
当時私はいまと比べ物にならないくらいに絶望的な気持ちで。
おそらくとても。切羽詰まっていて。
何しろ引っ越そうと決めてから1週間足らずで家を見つけ、その数日後には引っ越していたくらいに…まるでなにか大きなおそろしいもの、あるいはひたひたと冷たくて悲しいものから逃げるように…急いていた。
いや実際に、逃げてきたのだ。
自分がとらわれしがみついていた悲しい過去から。
これ以上、下がれないと思えるくらいにどん底の自分から。
いまでもよく憶えている。
そのきりきりとした、こころの状態が。
大家さんのこまやかな心遣いによって。とてもとても救われたのだった。
そうしてこの新しい街で。家で。私は私をやり直そうと思った。4年前の冬。
あれからもう4年経つのだ。早いものだ。
あの頃に比べたら。私はとても元気だと思う。
いまでも迷ったり悩んだりしていることはたくさんあるけれど。
少なくとも、元気だ。そうしてたぶん、それが何よりなのだ。
私は。だから。
私が大家さんのサンタクロースに救われたように。
いま傷ついているひとがいたら、そっとなにかを差し出したいと思う。
差し出がましくない程度に。あるいは差し出がましいと思われても。
そんなふうに思う。
もうすぐクリスマス。