こころが折れる音をきいた。


このひとは一生変わらないのだ。
一緒にいるだけでこんなにも傷つく。
どんなに大切に思っていても。
大切に思っているといわれても。


そう思ったらこころが折れた。

ぽっきり。そんな音がした。


週末にプールに行った。
東京のはずれのほうにあるプール。
前からとても楽しみにしていて。新しい水着まで買って。
そんなふうに楽しみにしている私を、恋人は楽しそうに見ていた。はずなのに。


こんな気分では行かないほうがいいかなと思ったけれど
でもやっぱり行ってきた。
いつもみたいに笑ったりできなくても、
行けばなにかが変わる気がして。
少なくともなにもしないでふたりでいるよりもずっとましな気がして。


プールのあとはスパに行って、花火を見た。
スパは気持ちが良かったし、花火はとてもきれいだった。
ビニールシートをしいておつまみとビールを買って
ふたりで花火を見上げた。どんどんとあがる花火を見上げた。
きれいやなあと恋人はたくさん言っていて。
なにごともなかったようにできないのかなと私は隣で思っていた。
かなしいことはぜんぶ。なかったようにできないのかな。
それともかなしいことはぜんぶ。私の勘違いだったらいいな。


そんなふうにしてまた夜が過ぎる。


耐え切れなくなった私は恋人にきくだろう。
そうすると恋人はいつものようにいうだろう。
なんにもあらへん。だいじょうぶや。


だいじょうぶ。
だいじょうぶ?


なにがどれくらいだいじょうぶだというのだろう。
私はこんなにも損なわれているのに。損なわれてしまっているのに。


私はいったいなにを求めているのだろう。
私が求めているものは私の手のひらに。未来に。
ちゃんとあるのだろうか。