いったいいつから煙草を喫うひとが迫害されるようになったのだろう。
私が学生のころはまわりの男のひとたちはみんな煙草を喫っていたし、子どもの頃に時々乗った長距離電車は喫煙がデフォルトだったように思う。
父もずいぶん長いこと煙草を喫っていたし(私が子供の頃はハイライトを1日2箱というヘビィスモーカーだった。病気を機に辞めてしまったけれど)、兄は喫わないけれどふたりの弟は喫煙者だ。


そのせいもあるだろうか、私は煙草の煙がそんなに気にならない。
もちろん好きこのんで喫煙車に乗ったりはしないし、お店ではなるべく禁煙席に案内してもらうけれど。


Soh's BARは愛煙家のためのバーである。
倉本聰さんがプロデュースしたこのお店のコンセプトは、

for miserable smokers.


禁煙の喫茶店があるならば、愛煙のバーがあってもいい。
という趣旨でつくられたそのお店は、愛煙家のためではあるけれど、もちろん煙草を喫わないひとでも十分と楽しめるお店である。


Soh's BARは森の小道の奥にひっそりと建っている。
倉本さんの書斎を模したという石積みの店内には、低くゆるやかにジャズが流れている。
木肌が美しい高い勾配天井。赤々と火が入れられた大きな暖炉。
静かでゆったりとした空間。


私がお邪魔したのは初秋の平日の夜。
そのせいもあるだろうか、お店は数人の先客のみで、みなそれぞれの会話と時間をそっと楽しんでいるという風情。
煙草を喫っているひとも、喫っていないひともいる。

その日居合わせたなかでは、私たちがいっとう若いお客だった。


そう。たとえばここは銀座のシガーバー、あるいは帝国ホテルのバー・インペリアルに少し似た雰囲気がある。
流行に左右されない、シックな品のよさ。
年配の男性客が似合う店。


愛煙家のための、というよりもむしろこの店は
そのほうが正しいのかもしれない。


#Soh's BAR[富良野]