私の日記をよく読んでくださる方から、少し前に京都についてのコメントをいただいた。
好きな街はいくつもあるけれど、京都はとても好きな街のひとつだ。
学生のころからいまに至るまで、ほとんど毎年京都に行っている。


京都のこと。

私が京都でいっとう好きな場所は、南禅寺のそばにある金地院。
金地院は南禅寺の塔頭(たっちゅう)である。
ここはとてもちいさなお寺だし、主だった観光名所とも違うのであまりひともいない。
枯山水の庭は、小堀遠州によるものだ。

歴史とか様式のことはよくわからないのだけれど、
このお寺の方丈の端っこにすわり、凛とした美しさを湛える庭を眺めると、どんどんこころが静まりかえってくる。
いまここにいること。その事実だけで満たされていく感じがする。


妙心寺の塔頭である退蔵院も、好きな場所のひとつだ。
季節の花が咲く庭。静寂を高めるししおどしの音。
ここの庭は起伏に富んでいてとても素晴らしい。こちらは狩野元信による。


退蔵院には水琴窟がある。
きんきんこんこんと細くちいさく可憐な音で響く水琴窟の音色。
耳を澄ませながら目を閉じる。
いつまでもこの音を聞いていたいといつも思う。


余談だけれど、いま住んでいる家のそばの博物館の庭には水琴窟がある。
いつかいさんで行ってみたら、その水琴窟からは近くの道路を行きかう自動車の音が聞こえてがっかりした。水琴窟はまわりが静かでないといけないのだ。


もうひとつ大好きな場所は、樂美術館。
樂家は、千家の茶碗を代々焼いている家で、その歴々たる茶碗がこの美術館には展示されている。
初代長次郎の黒焼の前では本当に言葉を失うし、四代一入の赤樂もしんとしていてとても好きな茶碗だ。
美しい茶碗を眺めていると時間を忘れる。この茶碗が越えてきた歴史を思う。