〝星のや〟は谷間の集落をイメージしたコンセプチュアルな宿。
真ん中に池や川や棚田があって、古民家風のコテージがまわりをとりかこんでいる。
シックで清潔な部屋は、麻のカーペットが素足に心地いい。
この宿のインテリアの質感は、全体的に信じられないくらいに〝ちょうどいい〟ものだった。
ソファとかベッドとかシーツとかクッションカバーとかカーペットとか。
そういうものの肌触り。
大きな窓を開けると、軽井沢のひんやりとした空気が流れてくる。
川のせせらぎ。虫の声。鳥のさえずり。
私たちはひたすら部屋でごろんとして過ごす。
ごろんとして、たくさんおしゃべりをして。
星のやにはメディテーションバスというものがあって、
それはもうなんというか不思議な空間だった。
多分、子宮のなかをイメージしているのだろう。
暗闇のなか、ぬるめのお風呂でぼんやりとしていると、自分と自分以外のものとのさかい目がだんだんつかなくなってくる。
それは究極のリラクゼーションのような、一方で少しこわいような、不思議な体験だった。
一転、歩いて数分のとんぼの湯(これも星野リゾートが経営)は、広くて明るくて開放的だし(露天風呂もある)、お部屋のお風呂も池に面して大きな窓があって気持ちがいい。檜のかおりもする。
夜散歩をしていたら、蛍を見つけた。
薄緑色の光を放つ蛍。
束の間、蛍を眺めた。
またみんなで旅をしたいなあと思った。