ウィーンに着いてまず最初にしたことは、オペラ座のチケットを予約することだった。
本当は日本で準備をしていけばよかったのだけれど、なにしろ直前まで休むことも行き先も決めていなかったので、当然ながらオペラのチケットも持っていなかったのだ。
ウィーンに滞在していたあいだに見られるのは、ヴェルディの〝アイーダ〟または〝シモン・ボッカネグラ〟。
オペラ座の横にあるチケットセンターに行ったところ、〝アイーダ〟はすべて売り切れ。〝シモン・ボッカネグラ〟を観ることになった。
幸いボックシシートを予約でき(結構高価だったけれど奮発)、勇んでオペラ座に向かう。
オペラ座はとても美しかった。美しくてシック。
赤いじゅうたん。重々しい緞帳。オーケストラボックス。デコラティブな天井や階段。
華やかに着飾り鷹揚に歩くひとびと。
非日常という言葉がぴったりときた。
少なくとも現代においては。
不勉強ながら〝シモン・ボッカネグラ〟はまったく知らない演目である。
しかし心配には及ばず、とても素晴らしい公演で、カーテンコールでは何度もブラーヴォウの声が飛び交っていた。
(すべての演奏にブラーヴォウをいうのは日本くらいじゃないかと思う。ヨーロッパではいまいちな演奏には拍手すら散漫だ)
私もたくさん拍手を送り、美しいオペラ座をあとにした。