深夜のタクシーで恋人の家に着いて
窓のあかりが消えていると少し悲しい。
部屋にいてくれたらいいのになと思う。
だから玄関に恋人の靴を見つけると安心する。
帰ってきたそのままの形で脱いである靴。
起こさないようにそうっと部屋に入っても
恋人は私の気配でうっすらと目をあける。
そうしていつも同じことを聞く。
ナオ?いま何時?仕事何時に終わったん?
半分眠りながら言っているから、
お風呂から出たり、化粧水をはたいたりするたびに
恋人は目をあけて同じことを聞く。
だから私も同じことを答える。
いま3時。仕事が終わったのは1時半。
今夜はタクシーがなかなかつかまらなかったよ。
そんなふうに。何度でも。
そうか、大変やったなあ。
そういって恋人はまたいつのまにか眠りにつく。
ぐっすりと眠っている恋人の顔。
そのやりとりも光景も。私をとても安心させる。