市場をのぞくのは大好きだ。
私が育った家の隣にはちいさな青果市場があった。
毎朝、林檎やネクタリンや水蜜桃や長いもやねぎやじゃがいもが雑然と並び、いせいのいいおじさんたちの声がとびかっていた。
子どものころはよく市場のなかをぶらぶらして過ごした。
旅行に出るとたいていどこでも市場による。
町々の特産品や日用品がところせましと並んでいるところは愉快だ。
市場はどこの国でも同じ表情をしている。
活気と退廃。
ウィーンではナッシュマルクトという食料品市場と、そして蚤の市に行った。
駅と駅のあいだをちいさな食料品店がずぅっとつないでいる、という趣のナッシュマルクトは、築地市場の一店一店をさらにこじんまりとした、といったところだろうか。
エスニック食材やドライハーブやハムやチーズや野菜や果物や唐辛子などなど、食料という食料が売られていて、また軒先で食べることもできて、それはそれは楽しい市場だった。
蚤の市も同じ駅で開催されるのだけれど、こちらは日本のフリーマーケットを100倍くらい混沌と、雑然とさせたといった風合い。
いろんな人種が入り混じり、奇怪なものから美しいものまで売られていた。
ナッシュマルクトと蚤の市