私はひとりで旅に出るとどうも吝嗇になる癖がある。
もう大人なんだから、ゴージャスにしたっていいのに。
私が行った東欧3国は、オーストリアを除いてあまりユーロが流通していなかった。ツーリストが多く行くような場所はユーロでもよいのだけれど、基本的には現地通貨である。
私はチェコ→オーストリア→ハンガリーの順で移動していたので、コルナ→ユーロ→フォリントの順で通貨が必要になる。
これが結構厄介だった。
いま思えばカードを使えばよかったのだけれど、そういうことは何故かすっとんでいて、初日に現地通貨に両替したコルナをいかに最終日まできちんともたせ、さらに使いこなすかということにかなり頭を悩ませた。
しかしどうも計画性がないのが災いし、最初の辺はいつもの調子で豪快に食事をし、最後の辺は数百円しかなく毎食ホットドッグスタンド、という有様。
(コンサートや劇場には惜しげもなくお金を使っていたのだが)。
その日。私の財布にはほんの少しの小銭しかなかった。
日本の1万円札はたっぷり(というほどでもないが)あるのだけれど、千円札はない。
いまここで1万円を両替をするのはあまりにも不経済だ。
そこでバックパッカー並みにホテルの朝ごはんを食べまくり、お昼ご飯は省略し、夜になる少し前にお腹にたまるホットドッグを食べることにした。
その夜、旧市街広場のすぐそばの市民会館で開かれるコンサートに行くことにしていた。
お腹が空いている状態のコンサート、というのはとても惨めなものだ。
だいいち、お腹がぐうぐう鳴っていては音楽に集中できない。
いちばんいい席のチケットを買ったことを何度も後悔した。
ああこのチケットを、せめて2番目にいい席のチケットにしていたら、ふつうにレストランに入れたのだ。
そう何度思ってもあとの祭りである。