レストランには3種類ある。

記憶から抹消される店。
おいしかったけれどそれきりで終わる店。
リピートする店。


この言いえて妙な言葉は、私にフランス料理の世界を最初に教えてくれた友人によるものだ。
なるほど。確かにそのとおり。
そうして実際にリピートする店は、そんなには多くない。


ラ・バスティードに行ってきた。
最初は先輩に連れられて。そうして今回は食べ好きの友人たちとともに。


三田5丁目の交差点のそばにあるこの店は。
まだ発展途上だ。と私は思う。
夜見ると素敵だけれど、昼間に見るとちょっと拍子抜けするエントランス。
1階のドアは自動だし(このお店は2階にもドアがある)、プラスティックでできた蔦や葡萄が天井を這っている。そんな中途半端な装飾ならないほうがましだ。
発展途上か。あるいは料理以外の要素はどうでもいいのか。


でもラ・バスティードは。
私にとっては間違いなく〝リピートする店〟に分類される。


それはこのレストランの持つ独特のダイナミックさと。
シェフ・大谷さんの料理、その腕と世界の奥行き(あるいは進化)を知りたい、確かめたい。そんなところに起因する。


大谷さんはとても料理が上手だ。
このレストランは2階がカウンターテーブルになっていて、ディナータイムにはシェフズテーブルなみのもてなしが受けられる。
コースもアラカルトメニューももちろんあるのだけれど、その日にある食材を使い、大谷さんの提案や自分の好みに応じてどんどん料理がつくられる。


大谷さんはおそらく。
料理が大好きなのだと思う。
料理をつくること。フランス料理をつくること。


正直言って素材そのものの味を活かす料理なら和食屋にはかないませんよ、と大谷さんは言う。
でもここはフランス料理なんです。
素材を加工する。組み合わせる。引っ張り出す。そしてそれらをどれだけ美しく見せられるか。
それがフランス料理の醍醐味なんです、と。


確かに大谷さんの料理には。

その言葉どおりのダイナミックさと美しさが同居する。
意表をつく食材の組み合わせ。おいしくて美しいフランス料理。


大谷さんは料理を究めたい一心に見える。
その結果、こちらとしては残念なような嬉しいような複雑な気分になるのだが、ラ・バスティードはメニューを毎月変えてしまう。

旬の素材を使いたいから。新しい料理を考案したから。
たとえばコースメニューにあった、〝あの〟料理が次の月にはもうなかったりする。
でも代わりに新しい料理がきっと登場する。


いずれにせよリピートしないわけにはいかないのだ。

〝あの〟料理をもう一度食べたいし、新しい料理も試したい。
いったい大谷さんはどこまで行くのだろう。ラ・バスティードは。


大谷さんを見ていると。
フランス料理を好きでよかったと心から思う。


#ラ・バスティード[三田五丁目]