5月のある晴れた日。
家に帰ると。薔薇が咲いていた。
私が住んでいるアパートには。
赤と白の大きなつる薔薇
があって。
毎年この季節には。
アパートの壁一面がそれはそれは綺麗な花でうめつくされる。
自然というのは不思議なもので。
ある日突然、ぱあっとなにかが変わったりする。
いやそれは多分。決して。
〝ある日突然〟なんかではなくて。
毎日少しずつ起きているちいさな変化が
ある瞬間を越えるとひとの目に結実して見えるのだろう。
そのちいさな変化は。
おそらくはじっくりと観察していればきっと見えることで。
でも残念ながら。そうそうじっくりと観察しつづけるわけにはいかない。
だから〝ある日突然〟はやってくる。
いまちょうど。
白い薔薇は。つぼみがたくさん、大輪がすこし。
赤い薔薇は。まだつぼみがほとんど。
ああこのきれいなつる薔薇を。
今夜もそっと。じっくりながめる。