お花見の下見に行こうよ。
あの船着場の桜並木のところへ。


しばらく前の週末に。
そう恋人にいったら。


なんや花見の下見って。

そういって恋人は。おかしそうに笑う。


私は恋人が。
笑っているのを見るのが好き。


だから恋人にそんなふうに笑われると。
すっかり嬉しくなってしまう。
いつでも。どんなときでも。


ほらもう行くで。
あと3秒以内に準備しぃ。
とふざけていう恋人に。


待って待って。といいながら。
私はいそいそと準備をし。
お花見の下見、に出かけていく。
お花見の本番、は。
今日とはまったく違う場所なのだけれど。


恋人の家の隣町まで。
てくてくと歩く。


隣町には。ちいさな船の係留所があり。
そのまわりの土手に。
たくさんの桜の木が植えられている。


その週末は。
やっぱりまだ桜は咲いていなくって。
でもそのかわりに。菜の花畑ができていた。
やわらかな黄色い春のじゅうたん。


桜は咲いていないけれど。
本番の場所とも違うけれど。
でもとても幸せな気持ちになる。
春の散歩。


nanohana