先週。仕事でとある研究家のところへ赴いた。
いま開発中のサイトで連載を持っていただくことになったので。
顔見せ。兼、打ち合わせ。


ここでそのかたの名前や研究内容についてをつまびらかにすることはできないのだけれど。
(ここでは便宜的にセンセイと呼んでおこうと思う)
似たような分野でなにかと週刊誌をにぎわせているEさんや。
毎日のようにテレビ出演されるHさん、一時期有名になったKさんを。
センセイは名実ともに遥かにしのぐかたである。
ただしテレビ出演は一切しない。雑誌や新聞の取材もお断り。
年間数千件(!)に及ぶというその分野の相談と、あとは頼まれたときに講演会。


不勉強ながら。
そんな高名なかただと知らずにお邪魔した。


センセイは。
予想に反して背が大きく、締まった体つきをし(毎日スポーツジムで鍛えているそうだ)。
大声で笑い、話す、なんとも豪放磊落な方だった。
(研究分野からして、なんとなく小さくてほっそりとして神経質な雰囲気かと思っていた)


その日は顔見せが主だから。
おそらくは1時間。場合によっては30分で終わるだろうと思っていた。
しかし。始まったのは18時、終わったのが22時近く。
それはもう実に楽しい場になった。


たくさんの含蓄ある、興味深い話を聞き。
いくつかのこころに残る言葉を聞いた。


たとえば過度な謙虚さはむしろ傲慢であること。
たとえば正と悪の触れ幅が大切だということ。
たとえばものごとをすすめたいと思うときの戦術と戦略。
まっとうにいったらつぶされる。横からいったら響かない。ではどうする?
そんなときの具体的な手法について。
一流であろうとすること。誰にもなにもいわせない質と実をもつこと。そのあらわしかた。
そして。毎日を大切に生きるということ。


そんな大切なことを話すのに。それだけでは終わらずに。
シリアスな話の8割を。笑いにかえ昇華させる。その絶妙さ。
しかも相手を茶化して笑いにするのではなく。
自分を道化にする、そんな種類の笑い。


話していくうちに知ることになったのだけれど。
センセイがテレビ出演をしないのは。
〝家族〟と〝自由〟を守れなくなるから。だそうだ。
顔が売れる。そんなことよりも。大切なことがある。とおっしゃっていて。


さらにこれ以上新規の連載を持つつもりもなく。
(いまも10年前からやっている1本と、数年前にはじめた1本のみ)、
ここ数年の依頼はすべてお断りをしているそうなのだけれど。


ではなぜ私たちのアポイントを?と聞くと。


電話の雰囲気がとても感じよかったから。とおっしゃった。


この〝雰囲気がとてもよかった〟のは、
この日にも同行した制作会社の年配の男性で。
日頃から丁寧な物腰とものいいをされるかた。なるほど。


この偶然ではない、スタッフさんが築いてくれた出会いに。
心から感謝。