いつのころからか。
映画は一緒に見るようになった。


気ままに借りてきた映画を。
好きなときに見るひとだった。
そのときたまたま私がいたら一緒に見ることはあっても。
ふたりで一緒に見ることを目的にすることはあっても。


いまは違う。


たとえば一緒に映画を選ぶとき。
恐がりの私が見れないだろう映画を。彼は絶対手にしない。
これはだめやろ。見れへんやろ。そういって。
たとえば見たい映画がみつかって。そして私も見たそうなものだったら。
一緒に過ごせる時間にそれを借りる。


そんなことは当たり前だと。
昔の私は思ってた。


だって誰かと付き合うって。
そういうことだと私は思う。少なくとも私はそう思う。昔もいまも変わらずに。
妥協とは違う。譲り合いともちょっと違う。
思いやること。尊重すること。大切に思うこと。
楽しいことを、ともにしたいと思うこと。


こういうことがあまり得意ではなかったそのひとの。
その変化を嬉しいと思う。


たとえばとても嫌なことがあって。嫌なことを知ってしまって。
このひとはいったいなにを考えているのだろうかと。
私はこのひとと一緒にいていいのだろうかと。
わからなくなることも時にはあって。
それはいまでも時折つづいているのだけれど。


それでもこのひとを信じたいと思うのは。
たとえばその夜のような。そんな電話があったとき。