新宿は花園神社のすぐ脇に。
カナルというフレンチ・レストランがある。


新宿でフレンチ?と侮るなかれ。
カナルはそれはそれは素敵なレストラン。


古びた雑居ビルの地下1階。
狭い階段を降りると、入口には店内に入りきらなかったと思しき食材のケースや客人の傘、コートなどが置いてある。
開きかけたドアから漏れる明るいざわめき、カトラリーが触れ合う音。


そこは20席もないくらいの小さな小さなレストラン、カナル。


かしこまったサービスや静かでシックな雰囲気を求めるむきには。
この店はあわないに違いない。


だけれども。
仕事帰りのひとときを。週末のくつろぎの時間を。
仲間と、あるいは大切なひとと過ごすには。
この店はうってつけといえるだろう。


地下にある店だけに、天井は低め。
狭い空間に小さめのテーブルが並ぶ。
それがまた店との距離を縮め、食事をともにするひととの親近感を醸し出すのに一役を買う。


かつてフランスに住んでいたというマダムは表情豊かでサービスは情緒深く。
セミオープンスタイルのキッチンで立ち働くフランス人シェフの料理は、どれもおいしく味わい深い。
そして料理をいただくと。ほんのりと。そしてあたたかい気持ちになる。


そう、カナルで供される料理はどれも穏やかであたたかい。
カナルはフランスの田舎料理の店、らしいのだけれど。
その冠どおり、あるいはその冠を超えて。
誰か親しいひとの家に招かれて、得意料理でもてなされているような。
そんな気分になってくる。


カナルへは最初は大学時代の親友が誕生日祝いに招待してくれて。
その後は、弟を連れて、あるいは友だちとお邪魔した。
誰といっても。何度行っても。
この店の居心地のよさ、あたたかさは変わらない。


寒い冬場にぴったりの。
ほんのりと、あたたかい。

これはそんな素敵なレストランの話。


#カナル[新宿]