会社に行く道すがら。
たいていコーヒーショップでコーヒーを買う。
通勤に使う駅からオフィスまでは、複数の経路上に5~6店のコーヒーショップがあり。
寄るお店はその日の道順や飲みたいものによって選ぶ。


最近気に入っている、あるお店のこと。


このお店には。
私が男性なら、絶対食事に誘うのだが。
と思うくらい素敵な女の子がいる。


Hさんというその女の子は(ネームプレートをつけているのでわかる)、
爽やかで明るい笑顔をした、耳に心地よく響く声をもつ、そしてなにより細やかな気配りができて機転が利く、とてもかわいらしい女性。


たくさんの重い案件が山積みだったり。
なんのアイディアも出ないのに期限だけが迫っていたり。
そんな憂鬱に近い気分の朝も。
彼女の的確なサービスを受けつつ。


おはようございます。お待たせしました。いつもありがとうございます。


そして最後に。


お気をつけて、行ってらっしゃい。


そんなふうに言ってもらうと。
本当に気持ちが良くなるのだ。


そしてこれはどうやらマニュアルではないらしく。
なぜなら彼女以外の子たちは。
お気をつけて、行ってらっしゃい。なんてことは言ってくれない。


この頃彼女を見かけないなと少し残念に思っていたのだけれど。
今日のお昼時にそのお店に行ったら、彼女がいて。
ぱあっと嬉しい気持ちがひろがった。
なんだか恋をしているようだなとこっそりと笑ってしまう。
もちろん恋ではないわけだけれど。


でも。彼女を見るにつけ。
ひとのこころをこんなふうに動かすちからを。ほどくちからを。
ひとは持つのだなあということを。
それが名前も知らない、通りすがりのひとであっても。
ひとはひとに影響を与え、与えられ、そして生きているのだなあということを。
ものすごく思うのだ。


私は誰かに。
そんななにかを与えることができているだろうか。
たくさんの誰かに。大切な誰かに。


行ってらっしゃい、気をつけて。


時折だけしかまだ言えないその言葉に。

ちからがあることを信じながら。