旅の不思議シリーズ、その4。


日本にいても本屋さんがあるとついふらふら入ってしまうけれども。
海外でもたいてい書店に立ち寄ることにしている。

言語は違うけれど、本屋さんはどこの国でも
同じ空気が漂っている。


書店に寄るのは実利的な意味ももちろんあって。
旅に出るときは、数冊、厚めのペーパーバックを持っていくのだけれど。
行きの飛行機のなかやトランジットの間に読み終わってしまうのだ。


一冊の本を繰り返して読むのにも飽き。

特に帰国便ではかなりつらい思いを味わうことになる。

従って書店で万が一でも日本語の本に出会えたらいいなと書店を訪れる。
実際に日本語の本が置いてあったことは殆どないけれど。


さて。本屋さん。
海外の本屋さんの、旅行書のコーナーに行ったことがあるだろうか。
ここは極めておもしろい場所だ。


ここで私はいつも〝japan〟という標題の、つまり日本への旅行書を手にとる。


今回、ブダペストの中型書店に置いてあった、その名もずばり〝JAPAN〟。
日本の主要都市のみならず、全県にわたって観光案内が書かれている、厚さ数センチの立派な旅行書である。


この本がもうのけぞるくらいにすごかった。


最初の数十ページにわたり〝日本とは〟のようなコーナーがあって。
〝日本の風景〟として紹介されているのが。


浅草寺あたりで撮影したと思われる、両肩に鳩を乗せ、さらに鳩に餌をあげている中年男性、とか。
(〝鳩おじさん〟というキャプションも秀逸)


どこぞの田舎の行事でやっているような小学生くらいの子供相撲の集合写真を、〝sumou wrestler〟と紹介してたり、とか。
(いや確かに彼らだってsumou wrestlerだけど、でも違う。。。)


これまたどこぞの田舎の農家のおばちゃまのとびっきりの笑顔をかなりヨリで撮影していたりとか。
(キャプションはそのものずばり〝農婦〟)


高度成長期ですか?と思しきスーツ姿のおじさまがたが、日比谷公園と思われるベンチで佇む様子を〝現代日本のサラリーマン、働くおじさん〟とか。


明治神宮前交差点付近で撮影したと思われるゴスロリの女子高生、とか。


とにかく、もう。
笑いなくしては見られない。笑いすぎて涙が出た。

ブダペストの本屋さんで。


恐らく随分前につくった本の一部を流用したりしたせいもあるだろうし、
実際に、確かにそれらは〝日本の風景〟のひとつではあるけれど。
こんなにも矮小な、あるいは歪曲したところだけわざわざピックアップして紹介するなんて。ものすごいセンスだ。


本を買って帰るべきか真剣に悩んだけれど、
荷物が重くなるので止めにした。


これを見て日本に来るひとが
多少なりともいるかと思うと。
かわいそうなような楽しいような。


budapest_book

盗撮した旅行書の1ページ。
お相撲さんな少年、鳩おじさん、農婦、そして働くおじさん。