マングローブの森から帰り。
夕方に友だちと会う。


待ち合わせは、まるまビーチ。
上原港の脇にある、小さな海岸。


会社の同期だった彼女は。
1年半ほど前から西表に住んでいる。
意志的な目をした、とてもきれいなひと。


彼女に会うのは、実に7年ぶりのことだ。
同期とはいえ、関西で採用され、関西に配属された彼女とは殆ど話したことはない。
だけれども。
100人近くいる、その半数近くが女性の同期のなかでも。
彼女はもっとも印象的なひとりだった。私にとって。


いま彼女は、西表でトレガーワークを仕事にしている。
西表に行くからには、絶対に彼女に会おうと。それも決めていて。
だから行くと決まってからは。
何度かメールでやりとりをしていた。


そして私はついに今日。
彼女が待つビーチへ向かう。


夕暮れ。


白い砂浜の向こうに、彼女が見える。
大きく手を振り、ゆっくりと近づく。


再会。


会いたかったひとにやっと会えたという気持ちが強くする。
私にとって必要なひとに。
なんでだろう。とてもじんとする。


まずは彼女が淹れた冷たいお茶と、そしてお手製のバナナと黒糖のケーキをいただく。
ふんわりとおいしい。


そして。彼女からマッサージを受ける。
波の音を聴きながら。


マッサージはいつでもビーチで受けられるわけじゃないんだよね、と彼女はいう。
天気、潮の干潮、季節。
それらがすべてぴたりとこないとだめ。
だからナオちゃんはとてもラッキーなんだよ、と。


からだをほぐされながら。
静かに、ときに大きく笑いあう。


お互いの近況、共通の友だち、島での暮らし。
これからの夢、希望。
そして私の迷い、悩みのこと。
どうしたいのかすらわからずにここまできた、そのことについても。


彼女のやわらかい、あたたかい手を感じながら。
私のこころがどんどんほぐれて、広くなっていく。


本当のこころの大きさはこれくらい。
それがわかるくらいに。
自分がどんなに小さく縮こまっていたのか。
それがとてもよくわかるくらいに。


実際に、私のからだも。
本来の大きさ、やわらかさに開かれていて。


たとえば。信じられないかも知れないけれど。
腕や足が長く細くなる。
仰向けに寝転ぶと背中がぴったりと地面につく。腰が浮いたりしない。
目が大きくなり、視界が広くなる。
(宿の部屋に戻ると、化粧してきたん?と恋人に言われた。つまりそれくらい目が大きくなっていたらしい)


さらに。施術後にいただいたお茶の味も、ケーキの味も。
最初とは違う。正確にいうと、違うように感じるのだ。
ワークを受けると、触覚と嗅覚が人間がもつ本来のものに戻り、つまり研ぎ澄まされるせいだという。


浜辺のベッドに寝転んで。
冷たいお茶を飲みながら話をする。


私たちは。
お互いに。少しずつ変わったはずだ。
お互いのあいだに同じだけの時間が流れ。
いろいろなことがあり。
いまそれぞれの場所にいる。
そのことについて考える。話をする。


私の内緒の計画を打ち明け、
それがいいじゃん!そうしちゃおうよ、もう!!と。意気投合する。
そうしてくれたら嬉しいよ、と。
だから内緒の計画は。素敵なたくらみに変わる。


そろそろと日が暮れる。
南の島の、夏の夕べ。


iriomote_hosinosuna_3
星の砂海岸。