末弟から電話がきた。日曜日の夕方。


前日から40度近い熱を出し、アスピリンでなんとか熱を冷ましている。
今日は少し良くなってきたけれど、できればうどんを作りにきて欲しい。
そんな内容の電話。


風邪を引いたり怪我をするたびに、自分の家にひとりでいるのを嫌がり。
なにかと私の家に転がりこんでくる弟ではあるけれど。
今回はさすがに身動きもできず、でも風邪を引くたびに作ってあげているうどんがどうしても食べたいのだという。

日頃あまりわがままを言わない弟だけれど。
そんなことを言うなんて、よほどつらかったのだろうと思う。


弟の家に行くのは久々のことだ。
途中のスーパーでハーゲンダッツのアイスクリームやフルーツゼリーなどを買い求める。もちろんうどんの材料も。
少し話はそれるけれど、熱が出て食欲がない時におすすめなのは、チョコレートアイスクリーム。冷たいから熱いのどにもつるんととおるし、栄養がある。


アスピリンが効いているせいか幾分すっきりした顔の弟は。
このうどんが食べたかったんだよね、と言って。
一食分をまるまる食べきってしまう。
良かった。食欲が出てきたのは回復の兆し。
私がいると寝付けないだろうからと少し話をして早々に帰る。


翌日に電話をすると。彼女がお見舞いにきてくれていた。長野から。
ありがたいなあと思う。
栄養士の彼女のこと、きっとからだにいいものを作ってくれているだろう。
なによりも、好きな女の子がお見舞いに来てくれたことが、最高の薬になるに違いない。


具合が悪かったり、熱があるときに食べたいもの。


私は少し熱があるときはオレンジジュースを、ものすごく高い熱があるときはいちご牛乳が飲みたくなる。
そして熱が下がってきた頃に決まって食べたくなるのがぶどうパン。
それも街のパン屋さんの、ではなく、スーパーやコンビニでふつうに売っているような食パン生地の。
保育園にあがる前に、ものすごい高熱が何日も下がらずにいたことがあって。

でもやっと熱が下がってきたときにやっと食べられたのがぶどうパンだった。

恐らくはその記憶に結びついているのだろうと思う。


ひとそれぞれ、体調が悪いときに食べたいものや食べられるものは違うだろう。
そしてそれは局地的に食べたくなるものなのだ。ピンポイントで。


例えばうどん。パン。ヨーグルト。そんなふうに。

だから私は、看病する可能性があるひと…恋人や兄弟などには、あらかじめ聞いておくことにしている。

早く元気になって欲しいから。


具合が悪いときに、食べたくなるものってなあに?